光を背負う、僕ら。―第2楽章―



伸一は言葉のとおり、練習の邪魔にならないように静かに見学していた。



時々目を向けると子供みたいに尊敬の眼差しをあたしに向けていて、なんだかくすぐったい気持ちになる。




……正直、こういう時間は嫌いじゃない。



好きな人と二人きりの空間。


それはとても貴重で、ずっと続けばいいなと思う。




だけど矛盾したことに、この時間は気まずくて困るのも本音だった。



伸一が邪魔をしないようにって、黙って見学してくれているのは分かる。



でも黙って見つめられるたびに、緊張が指先から演奏にまで影響を与える。



伸一のことは決して嫌いなんかじゃないのに、今はその存在があたしを狂わせるんだ。




……それに、一番心配なことが一つある。



それはこの二人の時間が、他の人にばれてしまうこと。



こんな人気のない場所に二人きりでいることが知られてしまえば、どんな噂が立つのか計り知れない。



たとえ二人が、恋愛関係ではなかったとしても…。



伸一はあくまでも、学校の誰からでも好かれる人気者。


そして、れっきとした小春ちゃんの彼氏。



伸一や小春ちゃんとは正反対なタイプの大人しいあたしは、そんな二人の邪魔なんかしちゃいけない。



ありもしない噂なんかされたら、たまったものじゃないんだから。



< 64 / 485 >

この作品をシェア

pagetop