光を背負う、僕ら。―第2楽章―
――だけど、それでも。
この時間をあたしから奪わないで。
……あと少しだけでいいから。
そんなことを、思ってしまう。
いつからあたしはこんなにもわがままになってしまったのかな…。
理性が一部だけ残る頭でそんなことを考えながら、練習を進めていった。
「…ねぇ、佐藤君って忙しかったりしないの?」
練習を終えて、片付けの時間にそんなことを訪ねる。
伸一はもう喋ってもいいことを理解すると、何も気にしていない様子で答えた。
「んー。俺はいつでも暇だけど?」
「いや、でも…。あたし達一応受験生なんだし、塾とか勉強とか色々あると思うんだけど…」
「あぁ、そういうの?それなら全然大丈夫だぜ。塾は夜7時からだから、麻木の練習が終わってからふつーに間に合うし」
「そっ、そうなんだ…」
伸一の身の上のことも考えたというのに、あたしの心配はあっという間にはね除けられた。
何とか理由をつけて帰ってもらおうなんて考えたりもしたけど……。
彼を帰すことは、そう甘くはないらしい。