光を背負う、僕ら。―第2楽章―
……本当はこんなこと、言いたくなんかないけど。
「……小春ちゃんは、いいの?いつも一緒に帰ってるの見かけたけど」
「……小春?」
伸一の顔つきが今までとガラリと変わる。
きっと、あたしの口から彼女の名前が出てくるとは思っていなかったのだろう。
あたしを捉えている瞳が、疑問と驚きを訴えていた。
あたしだって、好きでこんなことを言ってるわけじゃない。
二人きりの空間で、現実に引き戻されるようなことなんて話したくもない。
……だけど。
あたしは、伸一の彼女じゃないから。
彼女は小春ちゃんだから。
自惚れるようなことは望んじゃいけない。
伸一がいるべき場所は彼女の隣であることを、嫌でも教えてあげなくちゃいけないの。
伸一は一瞬だけ……目を向けていなければ気付くことさえ許されないほどの一瞬。
――少しだけ、悲しそうに笑っていた。
「あいつのことは……いいんだ」
「…えっ…?」
ねぇ、どうしてそんな悲しそうな顔をするの。
あたしはただ、あなたが幸せならそれでいいと思っているだけなのに。