光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「小春とは最近一緒に帰ってねぇんだ。ピアノの練習とかで忙しいみたいだからさ。
ここ毎日はあいつ、放課後になるとすぐに帰ってる」
「………」
遠い目をして喋る伸一に、返す言葉が見つからなかった。
伸一は、あたしを見ていない。
視線の先はこの部屋から見えるグラウンドだけど、きっと上の空で見ていないに等しいだろう。
きっと見ているのは……一つに決まってる。
「……そっか。小春ちゃんは有能だから忙しいに決まってるよね」
……これ以上、あたしが関わっちゃいけない。
二人の関係に口出し出来るような権利なんて、あたしにはないんだから。
寂しいんだろうな。
彼のことを、そう思った。
伸一は小春ちゃんのことが大好きなんだって、遠くを見つめたときに改めて感じた。
きっと伸一は今、小春ちゃんと会えなくて寂しいと感じてる。
あたしと過ごすこの時間は…
きっと、その寂しさを埋める偽物でしかない。
「俺はあいつを、応援したい。
だから今は、一緒に帰らないって約束してるんだ」
悲しいはずなのに、伸一はすべてを振り切るように笑った。
――相思相愛。
二人にはきっと、そんな言葉がよく似合う。