光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「不思議なんだけどさ、これマジな話だからっ!
俺が小春のピアノを初めて聞いたのは、テレビでコンクールのこと取り上げられたときだった。だから麻木のピアノみたいに、こうやって生演奏聞いたことねぇよ」
「…そうなんだ。なんか意外だね…!」
伸一がわざとらしく笑うから、あたしも笑って返答する。
「…なんて言うんだろうな。
あいつ、結構プライドが高くて。本音らしいことはあんまり言ってくれねぇんだ。弱みも見せなければ、俺を頼ることもしない」
「………」
「多分ピアノのことも、それと同じなんだろうな。小春にとってピアノは本心に近い存在だから、俺には簡単に聞かせてくれねぇんだと思う」
「……そういうの、佐藤君は寂しい?」
「どーだろな。頼られないのは信用されてないからなんかなーって思うと嫌だけど…。
まぁ、誰にも言いたくないことの一つぐらいあるし。
寂しいって言えば嘘になるだろうけど、しょうがねぇんじゃないかな」
俯き加減で話していた伸一だけど、最後には前を向いていた。
言葉とは裏腹に、怯えた表情をしていたけれど。