光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「………」



伸一とは、相変わらず放課後の時間を一緒に過ごしている。



教室にいるときはまったくと言っていいほど関わらないあたし達だけど、放課後だけは特別になる。



二人きりの時間の伸一を知ることが出来るのは嬉しかった。



だけどその一方で、教室にいるときに小春ちゃんの隣で笑う伸一を見かけるたびに、目を逸らしかけていた現実を見せられる。



どれだけ放課後は伸一と仲良くしていても、所詮あたしはただのクラスメート。



これ以上一緒にいても、辛くなるのは目に見えていた。



……だけど、それでも好きなんだ。



辛い恋だと分かっているのに諦められないなんて、あたしもきっとどうかしてる。






「……で、佐奈は本当に告白しないの?」




お昼休みにお弁当を広げながら明日美と流歌に伸一とのことを報告したところで、明日美がやや真剣な口調で尋ねてきた。




「…うん。一時でも一緒にいられるだけで、十分満足だから」




今の伸一との関係はあたしにとっては辛いだけだけど、このまま放課後の練習を続けていく。



そして伸一への想いは絶対に伝えない。



一緒に過ごす時間は辛くても、幸せな瞬間も確かに存在しているから。



そんな些細な幸福を壊すことなんてしたくないから、あたしの気持ちは心の中で留めておくんだ。




……と言ったあたしの心情に、どうやら二人は納得がいかないらしい。



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