光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「今の時間が幸せだって言う佐奈の気持ちは分からなくもないけど…。告白しないって決めちゃうのは大袈裟じゃない?」
明日美は声のトーンを落として再び尋ねてきた。
教室の角の方であたし達と同じように友達と昼食を食べている伸一のことを、どうやら気にしているらしい。
何かを楽しそうに話しながらサンドイッチを頬張る伸一をチラリと窺って、あたしもお弁当のおかずをつまむ。
「…だって、伸一の小春ちゃんを想う気持ちを聞いてたら、あたしの気持ちなんて言えないよ。
だから、あたしは気持ちを言わないほうがいいと思うんだ…!」
「佐奈…」
あたしよりも落ち込んだ表情で見つめてくる二人をよそに、黙々とお弁当を食べる。
だけど大好きなハンバーグも卵焼きも全然味がしなくて。
表情では明るく振る舞っていたけれど、自分の決断に一番満足していないのはあたし自身だった。
伸一はよく、小春ちゃんの話をしてくれた。
それはときどきノロケみたいな話だったり、ちょっとした相談だったりしたけれど、彼女の話をする伸一はいつも幸せそうだった。
寂しそうにしたりしているくせに、本当は誰よりも小春ちゃんのことを理解していて。
不安そうに笑うのに、いつも小春ちゃんのことを心配している伸一。
そんな伸一は、誰から見ても幸せオーラが漂っていた。