光を背負う、僕ら。―第2楽章―
『人は、誰かとまったく同じように生きることなんて出来ない』
その言葉は伸一を勇気づけるつもりで思いついた言葉だったけれど……。
本当は一番、自分に言い聞かせたかったことなのかもしれない。
あたしは伸一とは逆で、反対されてでもお母さんと同じ道を進もうとしている。
きっとその先では伸一が悩むように、ピアニストだったお母さんと比べられてしまうときが来るのかもしれない。
でも……。
あたしは、こう思うことでそれを乗り越えていきたい。
お母さんには、お母さんにしか弾けないピアノがある。
そしてあたしにも同じように、あたしにしか弾けないピアノがあるんだって。
あたしからしか生まれて来ないメロディーがあるんだって。
そう信じていくことで、あたし一人だけの人生を満喫していきたいんだ。
だってあたしにしか、味わえない生き方があるのだから――。
……そういう気持ち、伸一にもちゃんと伝わっているといいな。