百物語
出来るだけ音がなりそうにないところを歩いていく。


それでもかすかに音が鳴る。



頼む…!


せめて隠れられそうな部屋に行くまで…!!


その時だった。


ーータタタタ


「!!」


恐る恐る振り返るとーー居た。



上がってきた階段の先に影が。



初めは丸い球体、次に靄のようなもの、その次に人の形……。


段々と大きくなってきたその影は今や体長2mくらいの四足歩行の化け物になっていた。


おわっ…た。


いくら声を出さなければ良いと言ってもこんな目の前で捕まれば締め付けられて声を出させられるに決まっている。


しかし下手に動けばかえってその化け物のに場所を知らせてしまう。


でも…どうせやられるなら走って少しでも可能性にかけた方がいい。


やらなければ0だ。


前を見る。


すると崩れそうな箇所があった。


もう一度後ろを振り返る。


化け物はぐにゃぐにゃとその姿を歪ませながらあたりを伺っている。


ーーいける!


私は再び前を見据えて端のしっかりとした部分をゆっくりと歩き出す。


そして崩れそうな部分を過ぎた時……一気に走り出した。



!!!!!!



化け物が姿を戻して一気に走ってきた。


ギシギシと崩れそうなのも気にせずに私を捕まえることだけ考えて。


ゾッとしつつも私は安堵していた。


あれならきっと…!!


先程の崩れそうな床を化け物が踏んだ瞬間であった。



ーーガシャァン!!





案の定床が崩れた。


化け物は床と一緒に下は落ちていった。
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