鳴瀬菜々子の奇妙な日常《まあ、いっか》
何でこの、世界の恋人達が愛を語らい、甘く酔うであろう、このイブの夜半に、私は尾木夫妻の性生活の話をリアルに聞かされているのだろう。
結局、彼女は、本当は私の話を聞きたいのではない。
自分の事を聞いてもらいたいのだ。
「ねえ、夜中の三時までに仕上げないと配送に間に合わないから、もう仕事しようよ」
「ええー。
ここからが肝心なのよ。
じゃあ、あと少しだけ。
直哉さんにはね、こう言えばいいのよ、
…あのね、」
「……」
………。
…言えねぇよ。