鳴瀬菜々子の奇妙な日常《まあ、いっか》
いかん。
一言、言い始めると止まらない。
長年見て見ぬふりをしてきた。
――直哉に愛されてはいない。
……認めたくはなかった。
自分の気持ちが一方通行だなんて、夫に対して誰が認めたいだろうか。
山根と小林の不倫話の時もそうだった。
山根とデートしてもいいと直哉は言ったのだ。
これもついでに付け加えておこう。
「山根と……食事に行って後日談を聞きたいって、……あの時も…」
「行かないよ、菜々子は」
…………は。