鳴瀬菜々子の奇妙な日常《まあ、いっか》
よくある、石ころの裏には、大きなダイヤモンドが隠されていましたとさ。
昔話ならそんなオチだろうか。
そのダイヤを、輝かせるも、くすませるも、本人次第。
時間と自由は、お金よりも価値のあるものなのか。
その答えは、彼の生き方にかかっている。
「田村。
五十人の部下に、胸張って幸せだといえるようになれよ」
私は、彼に後悔が訪れないと、信じたい。
「鳴瀬さんって・・・。やっぱり深いなぁ」
田村は感心したように言う。
「そ、そうか」
・・・深くはない。私の言葉は、案外・・・浅い。
「銀行行ったら、私の八百円も忘れないように」
私の言葉に再び彼は頷いた。
お前と違って、私にとっては八百円も非常に大金なのだ。
「じゃあ、今日はダンボール、張り切って五千個つぶしてきてね」
「えー…、またですか」
五十人の部下が過去にいようが、ここでは私の部下である。
「また、じゃない!早く行け!」
かつての一千五百万プレイヤーは、無言で冷蔵倉庫に向かって歩いていった。