30女のレンアイ事情
あの人、きっと自殺しようとしてるんだ!
気がついた時には走り出していた。
どうやらそのビルは廃ビルみたいで、ろくにガードされていない入り口をくぐり抜け、その脇にある階段を駆け上がる。
お願い!
間に合って!
だけどお酒を飲んだ所為で思うように動かない脚。
しかもヒールときたもんだ。
私はやっとのことで階段を登りきり、屋上へ続く古びたドアを押した。
瞬間、強い風が私の髪を揺らす。
そして視界に入るのはフェンスの向こうの男性の背中。
どうやら間に合ったみたいだ。
「コラー!!!!あんた!なにしてんの!?」
「…………」
フェンスの向こうにいる男性が振り返った。
その表情は驚いているよう。
「ばか!早くこっちに来なさいよ!!!!」
もう一度叫ぶように言うと、私はフェンスの男に近付き、その腕を掴んだ。
「自殺なんてしちゃダメ!早くこっちに!」
「いやだね。」
「は…はぁ!?」