30女のレンアイ事情
ニヒルに笑う男に目を奪われた。
風になびくさらさらな黒髪、
シャンプーなのか、香水なのか、いい匂いがする。
しかもかなりの男前ときたもんだ。
なにより若い。
みた感じ、25〜27歳の間くらいだろう。
「何言ってんの?バッカじゃない?あんたまだ若いんでしょ!?自殺なんてやめなさい!」
そうだよ。
死んじゃだめだ。
自殺なんてもっとだめだ。
男はもう一度ニヒルに笑うと、フェンスを跨いだ。
そして私の前に立つ男。
彼のほうが背が高いため、必然的に私が見上げる形になってしまう。
とりあえずホッとした私は、また飛び降りようとされたら困るため、男の腕を引いて、ひとまず廃ビルから出たのだった───。