30女のレンアイ事情
とりあえず話し合いをするため、タクシーを捕まえて私のマンションへとやってきた。
ローテーブルの向こうに彼は座り、私も向かいに腰を下ろした。
あれだけアルコールを飲んだというのに、今では酔いも吹っ飛んでいる。
それもこれも、今目の前にいるこの男の所為なのだが。
とりあえず身元を聞き出そう。
私は一つ咳払いをすると、男を見つめた。
彼も私を見たようでガッチリと目が合う。
なんだよ今のトキメキは。
「…あんた名前は?」
邪念を振り払い、そう訊ねる。
するとまたニヒルに微笑む彼。
なんなんだよ、その余裕。
私は息が詰まりそうだっていうのに。
「なに?俺が気になる?」
はぁ!?
「気になるから聞いてんでしょう!?いいから言いなさい!」
ああああ!
頼むから血圧をこれ以上上げさせないでくれよ!
「そんな怒るなよ。名前ね名前。秘密。」
おい。
お前いっぺん死ねや!
だめだ。
そんなことをしたら(言ったら)また振り出しに戻ってしまう。