30女のレンアイ事情
「おかえり。」
「…………ただいま。」
驚いた。
部屋の鍵を開けて中に入った瞬間、帰ってくるのを待っていたかのように日向がいて。
私に“おかえり”と当たり前のように言った言葉に少しだけ嬉しく思ってしまった。
これじゃあまるで新婚さんみたいじゃないか。
そう考えたらなんだか日向の顔を直視できなくなって、私は意味もなく視線を床のフローリングに向けた。
「なにしてるの?早く上がりなよ。」
腕を軽く引っ張られ、ハッと日向を見る。
日向は口元に笑みを作って私を見ていた。
「……………」
靴を脱いで部屋に上がると、私はそのまま寝室へと向かった。
すると、ベッドの上に無造作に置かれた携帯が鳴り響いて着信音を知らせる。
「(誰よ…。)」
携帯を開いてディスプレイに映し出された名前を見て、私は通話ボタンを押した。
「はい、もしもし。」