30女のレンアイ事情


「バカ…っく、…どきなさいよぉ…っ、」



そう言えば両手を拘束していた日向の手が緩んだ。



その隙に抜け出せた私は慌てて涙を拭った。



今になって冷静に戻れた。



「何すんのよ!私のファーストキスを返せ!」



そう言った後に後悔した。



目の前の日向がニヤリと笑って私との距離をまた縮めてくる。



そして一言。



「へー…、今のファーストキスだったんだぁ。」



「えっと…、」


しまった。
何自ら暴露しちゃったのよ!
私の馬鹿!馬鹿馬鹿!



しかもかなり恥ずかしい!


「じゃあ俺が奈月さんのファーストキスの相手なんだ。」



ムカつくけどそういうことになる。


ホントにムカついて眉を寄せた私を見てクツクツ、と喉で笑う日向。



そして更に距離を詰めた日向が言う。



「ごめんね?奪っちゃって。」



「死ね。」



そうだ。お前なんかあの時死んじゃえばよかったんだ。



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