太陽と雪
そう、矢吹に促されて、麗眞と相沢さんの元に戻る。

麗眞まで私服に着替えていた。
いつ着替えたの?

白いTシャツにデニムシャツにカーキのズボンに黒いスニーカーという格好。


「姉さん。
そーいうの、着るの止めな?
エロいだけだよ?」

姉に向かって、着ている服に文句をつけてくる。

「麗眞!
貴方ねぇ!

着替えてきた姉に向かって開口一番、それはないでしょ。

というか、私が何を着ようと私の勝手じゃない!

私にとっては弟の貴方に指図される謂れはないわ」

私も売り言葉に買い言葉だ。
麗眞は小さくため息をついた。

「ホント、頼むから丈の短い袖ありのカーディガンでもジャケットでもボレロでも何でもいいから、羽織れよ。

姉さんのために言ってるの。

姉さんも風邪引いたら困るし、俺も困るの。

心配で仕事なんかやってられねぇよ」


「はあ?

私は、そんな言葉で騙されないわよ。
というか、貴方には愛しの椎菜ちゃんがいるでしょう。

彼女が仮に今の私と同じ服着てたとして、同じこと言うの?」


「俺は姉さんのために心配してるんだからさ。

俺はそこで椎菜の名前が出てくることが解せないんだが。

ま、椎菜は今の姉さんの服も普通に着こなせると思うけどな。

んでもって、今それ着てたら容赦なく襲う。

白い服とかエロいだけだもん。

ってか、姉さんもえげつないことするよな。
想像させるなよ、まったく。

抑えた理性が台無しだ」


冷房がかなり効いているヘリ内でノースリワンピでいることで、風邪をひかないか、一応心配してくれているらしかった。


「……矢吹。
何か持ってきなさい」

「かしこまりました」

矢吹は一度下がってから、私に黒の半袖ボレロを着せかけてくれた。


「ありがと、矢吹」


「なぁ……姉さん」


「何よ、麗眞」


「姉さん、知ってた?

美崎の家……結構裏社会で暗躍してる財閥なんだよ」


えっ!?

そんな話は、生まれて初めて知った。


「聞いていないわよ。

そんなこと、今この瞬間に初めて聞いたわ」


麗眞の話によると、人身売買や麻薬密輸、販売などの業績が高く、裏社会ではトップらしい。


「姉さんが飲まされたあの睡眠薬、ガンマヒドロキシ酪酸も、城竜二財閥が製造、販売しているそうだ」

「じゃあ……この間、美崎が私に睡眠薬飲ませたりしたのも……城竜二財閥にいるせい?

だったらなおさら早く、助け出す必要があるわね!
ホラ、朱に交われば赤くなるって言うし」


「まあ……そうだな」

麗眞と矢吹、相沢さんが目線を合わせて微笑んだのが、気になった。
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