太陽と雪
思惑

経営難

束の間のバカンスから帰って、1ヶ月が過ぎた頃だった。

突然、ママから声がかかった。


｢彩？
麗眞でもいいけれど。
いるの？｣


玄関口から､インターホン越しにママの声が。


｢奥様。

どうなさいました？
確か、旦那さまとMLBの期間はアメリカに行かれると伺っておりましたが｣


他ならぬ矢吹が一番驚いていた。


｢ママ！

どうしたの？

急に……｣


｢彩。

貴女……さては呑気に今起きてきたばかりね？

じゃあ……今朝の株価ニュースを今すぐに見なさい！

大変なことになってるのよ。

貴女が経営する､北村動物病院及び、その系列の株価｣


確かに、ママの言うとおり、今さっき矢吹に叩き起こされたばかりだ。

そんな寝起きの頭が。

こんなことではっきりしてきた。


｢矢吹、ノートパソコンを持ってきなさい！」


私の真面目すぎる有能執事にそう命令する。

彼は即座に私の部屋からノートパソコンを持ってきた。


私の株価操作専用パソコンだ。


言った通り、株価を見てみる。

確かに､北村動物病院系列会社の株が昨日より大幅に下落している。


北村動物病院の株に至っては、大暴落だ。


｢な……何で急に!?
おかしいわよ……こんなこと！

昨日はこんなこと……なかったのに」


｢どうしたんだよ、姉さん……

朝からそんなでかい声出して……｣


目を擦りながら眠そうにリビングへと降りてきた麗眞。


｢株価が暴落しているのよ……
北村動物病院関連の会社だけ｣


「姉さん。

でもその株価の一部は宝月家が管理してるんじゃ｣


その麗眞の一言で、矢吹の顔色が変わった。

自身が持つネットブックPCのキーボードをおもむろに叩き始める。


｢彩お嬢様……

申し訳ございません……

宝月家のセキュリティシステムに、ほんの僅かながら損傷が見受けられます。

迂闊でした｣

はあ？


宝月家のセキュリティサーバーシステム､鉄壁なんじゃなかったの！？


｢ウジウジ悩んでいるのも時間の無駄だわ！

とにかく、今からTV電話で皆に召集をかける。

緊急で会議を行うわ！

矢吹、朝食なんていらないから、髪のセット手伝いなさい！」


｢かしこまりました。
……彩お嬢様｣


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