太陽と雪
「ふう。
疲れたわ」


「お疲れ様でございます、彩お嬢様」


屋敷の自室に着くなり、着ていた白地にドット柄のスカートと濃いベージュのミニスカートを脱ぎ捨た。

胸下に黒いリボンのついた白いキャミワンピースに着替えた。


「何よ。
三咲 奈留……

英語はペラペラじゃない。
教え甲斐がないわ。

カルロスにしては珍しく褒めていたけれど」

とにかく、本番まではあと5日か。


「準優勝くらいはしてもらわないと困るわ。
私がここまで協力してるんだから。

北村動物病院みたいなところは、30万円なんて金額、市場ではかなりの赤字とみなされるから、何とかしないとね」


「そういえば、女性限定の獣医師コンテストとかいうふざけたものを企画したのが誰なのか、気になるわ。

あのコンテストの概要が書かれた紙も、あの経営会議の時に預かったし」


「そうでございますね。
その調査は私が致しましょう」


「頼んだわよ。
私はいろいろ忙しいんだから」


了解致しました。という矢吹の声を聞いて、自分の自室に向かった。

天蓋付きのベッドの近くのチェストの上にノートパソコンを置いて、スカイプでテレビ電話を試みる。


「ごめんなさいね?
なかなか連絡できなくて」


相手はあの会議の時に紙を渡してくれた書記である、ジェームズだ。


『いや、大丈夫だ。

私の会社は、株価を順調に上げているから、心配することは無い。

大変なのは彩の経営する動物病院だろう?』


「ええ。
ところで、会議中に渡してくれたあの紙なのだけれど。

貴方、誰かから預かったって言っていたわよね?

その人の特徴とか…覚えていないかしら。
どんな些細なことでもいいのよ」


『ふふ、彩。
君の家はやはり、刑事家系のようだな。

口調がお父さんやお母さんそっくりだ』


「私が?
あんな連中と一緒にしないでくれるかしら。

そんなこと、断じてあり得ないわ!」

『ごめんごめん。

君には、その言葉はタブーだったね。

僕にあの紙を渡してくれた人だっけ?

キャップを被っていたし顔はよく見えなかったんだが、頬に大きな傷があったよ。

それに、腕には、Gのタトゥーがあったな。

その渡された紙の裏と同じマークだったからよく覚えているよ』


Gのマークのタトゥー。

見覚えがあった。

あの貸切にしたテーマパークのカクテルパーティーのときにいた連中と同じだわ。

ジェームズにお礼を言ってスカイプを切った私はすぐさま院長に電話をした。

確か、残業中だったはずよ。

その院長に頼んだ。
あの、コンテストの概要が書かれた紙をコピーして持ってきてもらうように。

盗聴器などが仕掛けられていたりすると怖いので、使用人の1人に動物病院まで行ってもらうように依頼をしておく。

これでいいわ。


手がかり派掴めた……はず。
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