太陽と雪
「麗眞。
貴方、他にはない?

私に隠していること」


「姉さん。
知ってる?

城竜二家の執事、日替わりらしい」


「あら、そうなの。
それは知らなかったわ。

でもまぁ、その家によって習わしは違うものよ」


「んで、美崎さんはね、その執事を下の名前で呼んでいるらしい。

何か……怪しくない?

普通、執事を下の名前では呼ばないからな」

それだけを言って、じっと私の顔を見つめてくる麗眞。

「何よ」

「姉さんさ。
ない?

俺に言っていないこと」

「ないわよ。
そんなこと」

「あるんだろ?

姉さんのクセ。

都合の悪いときは目を背けるからな」

バレてたのね。


「当ててやろうか?

あのホテルで……会ったんだろ?
藤原さんに」

何で……そのことを?

「ん?
ただの勘だよ。

矢吹さんから聞いたの。

あの旅行の日以来、藤原さんの話題に敏感になっているって。

俺も、藤原さんっぽい人に会ったからさ」


「そうなのね」


「あの藤原、変わってなかった。
声は少し変わっていたけれどね」


「藤原の一番近くにいた姉さんがそう言うのなら、そうなんだろうな。

藤原のことを調べるのは俺に任せて、姉さんはコンテストに備えて早く寝たら?

明日寝坊したらヤバいんだろ」


麗眞はそれしか言ってくれなかった。

分かってくれているのかな。

私が、藤原の話は極力してほしくない、ってことに。

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