太陽と雪
「……矢吹。
どう思う?」


私は、会場から20km離れたレストランで食事をしていた。

その最中、矢吹に私が感じた美崎の行動の違和感を話していた。

「それは、確かに妙でございますね。

このコンテストは、美崎さまの役割はほんの少しで、他にいるのかもしれないですね」


「やっぱり、貴方もそう思う?

美崎、分かりやすいからね。

私、だてに小学生のとき、美崎と仲良くしてないから」


「そうでございますね」


「その辺の調査は、麗眞に任せましょ」

私や、私の動物病院のメンツより、椎菜ちゃんを気にかけていたのが、相変わらずムカつくけれど。

45分は、短くて……。

もうすぐ最後の種目、アジリティーが始まってしまう。

飲みかけのミルクティーもそのままに、レストランを後にしようとした。

「お嬢様、最後の一杯を楽しむ時間は、まだございますよ」

さすが矢吹。

私が、ミルクティーを最後まで味わうことなく店を出るのは性に合わないって、分かってるじゃない。

「行くわよ?」

無事、ミルクティーを飲み干した私は、レストランを出た。

私がフェラーリの後部座席に乗ろうとしたとき、矢吹が耳元で話し掛けてきた。

「お嬢様、口の周りがミルクで真っ白でございますよ?

私がとって差し上げましょうか?」

不覚にも、色気のある、低い声に、顔を真っ赤にしながら言った。

「自分でとるからいいわ。
ありがとう」


心臓に悪いわ、まったく。


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