太陽と雪
「さあ、彩お嬢様。
そろそろ、会場でございますよ?」

「ありがと、矢吹」


会場に戻ると、相変わらず声の大きい司会者がアナウンスをしていた。

「え~……もう間もなく、第3R、アジリティーを開始致します!

皆様にはこれから、競技場のほうに移動をお願いします」


え?

また移動するの?
面倒ね。

「矢吹!

移動すること知っていたんでしょう?

なぜ最初から、競技場のほうにリムジン……じゃなかった、フェラーリで行かなかったの?」

「彩お嬢様。

健康のためには、車を使わず、歩くことも大切でございます」

それだけの理由?

「少しでもお歩きになりませんと、お身体に悪うございますよ?

彩お嬢様」


私を気遣ってくれているのは分かったわ。

だけど、耳元で言うことなくない?


「ちゃんと歩くから、耳元で言うのは止めなさいよ」


「失礼致しました、彩お嬢様」


そう言いながらも、満足そうに笑みを浮かべて言う矢吹。

主をいじめるのが好きね、この執事。


競技場に着くと、麗眞からメールが入った。

警備として、選手を誘導した際、美崎と奈留ちゃんが仲良さげに話していたらしい。

『何かあったらすぐ言うのよ?』


『分かってる』

メールのやり取りはそれだけだった。

いけないいけない。

私もしっかり、見ていなくちゃ。
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