太陽と雪
数日後、矢吹のリムジンに乗って、動物病院に赴いた。
「おはよう。
雅志くん、奈留ちゃん。
今日も相変わらずラブラブね。
部屋の温度が上がるわ」
雅志くんと奈留ちゃんに、そう話し掛けた。
「そういうオーナーは、彼氏とかいないんですか?」
「いるわけないでしょ」
「うわ、もったいない……」
何がもったいないのよ……
好きな人なんていないしね。
そう心の中で言いながらも、矢吹のほうを一瞥したとき、ほんの少しだけ胸がチクリと痛んだ。
まあ、気のせいよね。
「まぁ……イチャイチャしてるのを見るのは好きよ。
私の両親も、そういうの、しょっちゅうだから」
私の両親なんて、私の目の前だろうがイチャついてるしね。
「そっ……そうなんですか」
「こんなこと……話したいんじゃないのよ。
雅志くんと奈留ちゃん、どうせ奈留ちゃんは近いうちにフランス行くんだし……
下見を兼ねて婚前旅行にでも行けばいいじゃない」
そう言って私は、2人にに3枚つづりのホチキス止めされた紙を渡した。
「宝月家が送る!
ロマンチックスペシャル9日間の旅」
と書かれている。
あれから少しだけ、題名を変えたのだ。
「あの……これってちなみに……
私たち2人……だけですか?」
もちろん、というように深く頷く。
ドイツ、スイス、フランスを巡る9日間の旅がなんと、たったの18万円。
多くの旅行会社や空港会社の株主であるパパが頼み込んだのだ。
パパ、自分の子供には甘いのよね。
「いいのよ、いいのよ。
私もね、あまり今まで病院の業務に関われなかったから。
その分の償いのつもりなのだけれど……。
嬉しくないかしら?」
「雅志。
ありがたく受け取っておこう。
私がフランスから帰ってきたときは……さ。
ちゃんとお礼すればいいじゃん?」
にっこり微笑んでから、ありがとうございますって頭を下げてくれた。
これくらいのこと、いくらでもしてやるわ。
恩を返さないほど薄情な人間ではない。
それを告げた私は、いつも通り、矢吹のリムジンで屋敷に戻った。
「あーあ。
明日から少し寂しくなるわね」
雅志くんと奈留ちゃんの旅行の案内人として宝月家から多くの執事が同行するのだ。
パパもママもMLB目当てでアメリカに飛んでしまった。
あんなマイナースポーツの、どこが面白いんだか。
麗眞も忙しくて帰って来ないし……。
寂しいことこの上ない。
「大丈夫でございますよ、彩お嬢様。
私は、彩お嬢様の側におりますので」
その言葉に、なぜか多大なる安心感を覚えていたのだった。
「おはよう。
雅志くん、奈留ちゃん。
今日も相変わらずラブラブね。
部屋の温度が上がるわ」
雅志くんと奈留ちゃんに、そう話し掛けた。
「そういうオーナーは、彼氏とかいないんですか?」
「いるわけないでしょ」
「うわ、もったいない……」
何がもったいないのよ……
好きな人なんていないしね。
そう心の中で言いながらも、矢吹のほうを一瞥したとき、ほんの少しだけ胸がチクリと痛んだ。
まあ、気のせいよね。
「まぁ……イチャイチャしてるのを見るのは好きよ。
私の両親も、そういうの、しょっちゅうだから」
私の両親なんて、私の目の前だろうがイチャついてるしね。
「そっ……そうなんですか」
「こんなこと……話したいんじゃないのよ。
雅志くんと奈留ちゃん、どうせ奈留ちゃんは近いうちにフランス行くんだし……
下見を兼ねて婚前旅行にでも行けばいいじゃない」
そう言って私は、2人にに3枚つづりのホチキス止めされた紙を渡した。
「宝月家が送る!
ロマンチックスペシャル9日間の旅」
と書かれている。
あれから少しだけ、題名を変えたのだ。
「あの……これってちなみに……
私たち2人……だけですか?」
もちろん、というように深く頷く。
ドイツ、スイス、フランスを巡る9日間の旅がなんと、たったの18万円。
多くの旅行会社や空港会社の株主であるパパが頼み込んだのだ。
パパ、自分の子供には甘いのよね。
「いいのよ、いいのよ。
私もね、あまり今まで病院の業務に関われなかったから。
その分の償いのつもりなのだけれど……。
嬉しくないかしら?」
「雅志。
ありがたく受け取っておこう。
私がフランスから帰ってきたときは……さ。
ちゃんとお礼すればいいじゃん?」
にっこり微笑んでから、ありがとうございますって頭を下げてくれた。
これくらいのこと、いくらでもしてやるわ。
恩を返さないほど薄情な人間ではない。
それを告げた私は、いつも通り、矢吹のリムジンで屋敷に戻った。
「あーあ。
明日から少し寂しくなるわね」
雅志くんと奈留ちゃんの旅行の案内人として宝月家から多くの執事が同行するのだ。
パパもママもMLB目当てでアメリカに飛んでしまった。
あんなマイナースポーツの、どこが面白いんだか。
麗眞も忙しくて帰って来ないし……。
寂しいことこの上ない。
「大丈夫でございますよ、彩お嬢様。
私は、彩お嬢様の側におりますので」
その言葉に、なぜか多大なる安心感を覚えていたのだった。