太陽と雪
理由

過去

宝月家がプランを立てたあの旅行も無事終わったみたい。

良かったわ。
あのバカップルに何事もなくて。


まあ、ハイキングの時に高山病にはなったみたいだけれど。


久しぶりに職場に顔を出してみたけれど、雅志くんは元気そうだった。


奈留ちゃんがフランスに行っちゃって、さぞ雅志が落ち込んでいるだろうと思って来てみた。

何よ。

案外元気そうじゃない。

「矢吹、そんなもんなの?
男って」


「そういうものでございますよ」


あら、そうなの……


まあ、私が葦田の代わりにフランスに行って、様子を見てきてもいいのだけれど……


そんなことを言っていると、私の携帯が鳴った。


「国際電話……?
麗眞からだわ」


私が麗眞に、あのコンテスト終了後、美崎と話したことを告げた。

その後すぐに、麗眞は美崎が今住んでいる別荘があるフランスに発ったのだ。


今回は相沢さんに城竜二の使用人への変装を頼み込んだようだ。

本人はかなり戸惑っていたらしいが。

なんだかんだやるあたり、麗眞への忠誠心はかなりのものだ。

さすが、麗眞自らがパパに頼み込んで自分の執事にしただけある。

「もしもし。

何よ。

なんで国際電話?

何のためにテレビ電話があるのよ」


『そんなこと言ってる場合じゃねえって!

情報がわかったんだ。

美崎さんの使用人だよ。

姉さんの病院から資料盗んだのも、株価大暴落させたのも』


「ちょっ、ねぇ、それ、ホントなの?」

てっきり、美崎本人だと思っていた。


『ああ。
だけどな。

おかしなことに、その資料、城竜二の家の金庫から消えてるみたいなんだ』


「それはちょっと、意味わかんないわね。

まあ、いいわ。

私もそっち行くから。

貴方は出来る限り、情報集めなさい。
そうね……美崎についてがいいわ」



『了解。
気をつけろよ?
姉さ……じゃなかった、彩』


「ちょっ……麗眞?
何よ……いつも”姉さん”なのに」


『彩、バカなの?

誰かが万が一にでもこの会話、盗聴してたらどうするんだよ!

彩との関係知られたら厄介だぞ?

何かあった時に、被害を被るのは俺だけで十分だ』


何よ……
ホント、変なところ、カッコイイんだから……

パパに似たのね、そういうところ。


相手はよく知ってる弟とはいえ、初めて呼び捨てで呼ばれたことが、ほんの少しだけ、くすぐったかった。


電話を切った後、矢吹に命じる。


「南に頼んで大至急、自家用ジェットを回しなさい!」


そう言ってから1分もしないうちに、既にジェットがあった。


「早っ……」


優秀すぎるわね。
さすが、宝月の使用人だわ。



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