太陽と雪
南が補足する。

「今や、城竜二家の使用人は、全て奥様の指示で動いています。

盗んだ資料を自らの意思で返しに行くなど、当主に背く行為。

麗眞さまに奈留さまの監禁場所を教えるなど、そのような行為もでございます。

美崎さまが財閥にとって、危険な存在。

そう認識されたが最後。

それこそ秘密裏に暗殺される可能性も考えられます」

南は一時期、変装して城竜二の使用人になったことがある。

だから、その辺の事情もよく分かっているのかもしれない。

「財閥は、嫌いますからね。

自分の企業秘密が外に漏れることを。

それが組織にとって重要な情報であればあるほどその気持ちは大きくなります。

どんな手を使っても阻止するのではないでしょうか……」

矢吹ったら……また怖いこと言うんだから。


ホントに、美崎の身に何かあったらどうしてくれるのよ……!


「とにかく、急ぎなさい!」


病院に着くと、今日は休みなのか、人がいなかった。


だけど。


ときどき、ゴトゴトと不審な物音がどこかから聞こえる。

何なの?


とにかく、入るわよ。


「お嬢様、ここは、私どもが先に……。

お嬢様を危険な目に遭わせるなど、執事失格です」


そうね。


お願いするわ。

この場では私の名前を口にせず、お嬢様とだけ呼ぶあたりも、デキる執事だわ。
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