太陽と雪
「んっ……
おはよ」


「おはようございます、彩お嬢様」


深夜から女の子の日が始まったため、腹痛でろくに眠れなかった。

この生理痛のせいかしら。

昨日も食欲、なかったのよね……

まあ、今もだけど。


そんなことを、この過保護な矢吹に言えるはずない。

専属医師の高沢を呼びつけて、絶対安静にしているように言うのよ。

そんなことされて、たまるもんですか。

今日は美崎のお見舞いに行くんだから。


「矢吹。
今日はなるべく普通の服選んで?

美崎のお見舞いに行きたいから」


「かしこまりました」


そう言って矢吹が持って来たのは、黒い襟がついたワンピース。

身頃部分はベージュになっているが、スカート部分はしっかり黒色だ。

生理であることを考慮したのだろう。

矢吹にしては、良い配慮だ。

なぜ生理であることを知っているのか、までは聞かないでおく。


「これならイケそうね。
ありがと、矢吹」


矢吹が後ろを向いた隙に、手早く着替える。


「どう?
矢吹」


「大変よくお似合いでございますよ?」


矢吹は恭しく頭を下げた。



メイクやら髪やらを施してもらっている間に面会できる開始時間である8時をとうに過ぎていた。



「矢吹っ!
朝食なんていらないから、玄関にリムジンまわして!」


「……かしこまりました、彩お嬢様」



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