太陽と雪

それから、１ヶ月経った頃。


私の携帯が、着信を告げた。

パパからだ。


「パパ？
急に……どうしたの？

今はMLB期間だから、アメリカにいるのでしょう？」


『彩。
彩の病院の獣医師……パリにいるんだったな。

えっと、名前は、奈留さんだったか。

三咲 奈留さんが男に暴行されていたから助けたんだが。

この娘、激しい腹痛を訴えていてな……

もしかしたら、流産って可能性もある』


「ちょっと待ちなさいな……

三咲 奈留が……妊娠？

そんな話……聞いていないわ！

おそらく……彼女の夫も知らないはずよ。

……バカだし鈍感だし」



ただでさえ……藤原のことでワケ分かんないときにコレ？


やめてよ……


『とにかく、オレはこの子を病院に連れていくことにする。

彼女の母親、三咲 朱音(みさき あかね)さん。

彼女は産婦人科医なんだろ？
研修でフランスにいるみたいだからさ』


「分かったわ。
私は、北村動物病院に連絡を取るわ。
パパ、ありがとう」


お礼を言いつつも、内心イラつきながら電話を切った。

国際電話で北村動物病院に電話を掛けた。

あ、忘れるところだったわ。


「矢吹。
北村動物病院にジェット機まわして」


「既に手配済みでございます。
あと3分ほどで到着するかと」


仕事、早いじゃない。

それでこそ、私の執事よ。