太陽と雪
真実
それから数週間が過ぎた。
宝月の専属医師、高沢は別荘にいないみたいで、そのことについて、矢吹に尋ねてみた。
「どうやら、その病院にいる産婦人科医、三咲 朱音様が医大生時代の先輩だったようでございます。
それだけではなく、高沢さんは朱音様に恋い焦がれていたと専らの噂で。
まぁ、朱音さまがご結婚されたことで、叶わぬ恋となってしまったようですが。
仕事の合間を縫ってご歓談はされているご様子です」
「そうなの?」
じゃあ、高沢が前に言っていたフランスにいる知り合いって……
ん?
三咲 朱音ってことは……
奈留ちゃんの母親?
私は、しばらく考えたあと、奈留ちゃんに電話をした。
彼女はほんの数日前に退院したはず。
私、前に奈留ちゃんと雅志に言われてたのよね。
せっかくここまで世話を焼いてくれたオーナー
に何かお礼がしたい。
だから、なにかあったら言ってくれ、って。
「あ、奈留ちゃん?
前に……言ってたじゃない?
私に何かお礼がしたい、って。
ちょっと聞きたいこともあるのよ。
何なら、フランスにある宝月の別荘、来る?」
いいんですか?
行きます!
と嬉しそうに言って、電話を切った奈留ちゃん。
専属パイロットの南が運転するヘリに乗って別荘まで来た2人。
なんか、パパとママからも別荘に来るように招待受けてたみたい。
なんなのかしら……
このときは、気にしなかった。
違う、気にならなかった。
まだ朝食も口にしていなかったから、完全に頭が働いていなかったのかもしれない。
やがて、私が別荘の全てを案内し終えた後、パパとママがリビングにやってきた。
「彩。
お前は部屋に戻っていいぞ。
この話、彩には関係ないことだ」
「はあ?
ワケがわからないわ。
私だけ除け者にする気?」
「彩……。
聞いて、後悔しないのかしら?
それならばいいわ」
ママまで、そんなことを言ってきた。
何か……あるの?
大体、まだMLBのシーズン中のはずだ。
2人の今の趣味を蹴ってまで、こちらに来た理由も分からない。
「この間、病室で言ったな。
奈留ちゃん……だっけ?
君を殴った男が自殺した、と」
「でも……違ったのよ。
遺体の身元を調べたら、貴女を殴った男とは全く別人のものだったわ」
「唯一、遺体の近くからこれが見つかった」
そう言って、パパが差し出したのは、ビニール袋に入った、薬と吸入器だった。
今も、私の脳裏に強く焼きついている映像が蘇ってきた。
「ち……ちょっと待ちなさい!
なんで……何で?
なぜ今更、彼の遺品が発見されるのよ!!」
私が忘れるワケない。
この薬も、吸入器も。
亡くなった私の元執事、藤原 拓未のものだ。
宝月の専属医師、高沢は別荘にいないみたいで、そのことについて、矢吹に尋ねてみた。
「どうやら、その病院にいる産婦人科医、三咲 朱音様が医大生時代の先輩だったようでございます。
それだけではなく、高沢さんは朱音様に恋い焦がれていたと専らの噂で。
まぁ、朱音さまがご結婚されたことで、叶わぬ恋となってしまったようですが。
仕事の合間を縫ってご歓談はされているご様子です」
「そうなの?」
じゃあ、高沢が前に言っていたフランスにいる知り合いって……
ん?
三咲 朱音ってことは……
奈留ちゃんの母親?
私は、しばらく考えたあと、奈留ちゃんに電話をした。
彼女はほんの数日前に退院したはず。
私、前に奈留ちゃんと雅志に言われてたのよね。
せっかくここまで世話を焼いてくれたオーナー
に何かお礼がしたい。
だから、なにかあったら言ってくれ、って。
「あ、奈留ちゃん?
前に……言ってたじゃない?
私に何かお礼がしたい、って。
ちょっと聞きたいこともあるのよ。
何なら、フランスにある宝月の別荘、来る?」
いいんですか?
行きます!
と嬉しそうに言って、電話を切った奈留ちゃん。
専属パイロットの南が運転するヘリに乗って別荘まで来た2人。
なんか、パパとママからも別荘に来るように招待受けてたみたい。
なんなのかしら……
このときは、気にしなかった。
違う、気にならなかった。
まだ朝食も口にしていなかったから、完全に頭が働いていなかったのかもしれない。
やがて、私が別荘の全てを案内し終えた後、パパとママがリビングにやってきた。
「彩。
お前は部屋に戻っていいぞ。
この話、彩には関係ないことだ」
「はあ?
ワケがわからないわ。
私だけ除け者にする気?」
「彩……。
聞いて、後悔しないのかしら?
それならばいいわ」
ママまで、そんなことを言ってきた。
何か……あるの?
大体、まだMLBのシーズン中のはずだ。
2人の今の趣味を蹴ってまで、こちらに来た理由も分からない。
「この間、病室で言ったな。
奈留ちゃん……だっけ?
君を殴った男が自殺した、と」
「でも……違ったのよ。
遺体の身元を調べたら、貴女を殴った男とは全く別人のものだったわ」
「唯一、遺体の近くからこれが見つかった」
そう言って、パパが差し出したのは、ビニール袋に入った、薬と吸入器だった。
今も、私の脳裏に強く焼きついている映像が蘇ってきた。
「ち……ちょっと待ちなさい!
なんで……何で?
なぜ今更、彼の遺品が発見されるのよ!!」
私が忘れるワケない。
この薬も、吸入器も。
亡くなった私の元執事、藤原 拓未のものだ。