太陽と雪
何の話をするっていうのよ……

そんなことを思いながら、黙々とお昼ごはんに手をつけた。


「おいしい……」

言葉が棒読みになっている。

いつもの通りの一流シェフに頼んで作ってもらった食事のはずだ。

それなのに、いつもより美味しく感じなかった。


シェフには申し訳ないが、早く食べ終えてリビングに向かいたかった。

小さいときから藤原と一緒だったんだもん。


自分だけ現実と向き合わないのは、藤原にとっても辛いことだろうと思った。


一歩一歩、リビングへ続く階段を下りた。


真実を知るのが、こんなに怖いことだなんて、知らなかった。


だけど、聞かないでこのまま逃げるのは、もっと嫌だった。


ゆっくりゆっくりと、リビングの扉を開けた。


そこには、神妙な面持ちをしている両親と麗眞、高沢までもがいた。


「高沢……?

なんで……」


「申し訳ございません……

彩お嬢様。

藤原さんのことは……私の責任でもありますのでどうかお許しを」


高沢の……?
どういうことなの?


「彩お嬢様は……
藤原が気管支喘息を患っていたことを…一緒にいた頃はご存知なかった。

ですが……私は気付いておりました」


「そりゃ……専属医師だもの。

気付いて当然でしょ?」


「旦那様、奥様。
あの薬を」


高沢はそう言って、ビニール袋に入った吸入器と薬を私に見せた。


「お嬢様が今でもご記憶にあるという……

藤原さんが吸入していたという薬は……これでございますよね?」


「ええ。
そうよ?」


たまたま半開きになっていた藤原の机の引き出しから見えた吸入器。

それに書かれていた、ストメインDという名前…今でもハッキリ覚えている。

記憶を辿ってみても……間違いなかった。
この薬が……どうかしたの……?

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