太陽と雪
「この薬によって……藤原さんは亡くなったのです」


はあ?


薬で死ぬことなんて……ありえるの?



「副作用……

あるいは……危険とされている飲み合わせをしたか…だな。

それしか考えられない」


麗眞が、ポツリと呟いた。


「何よその言い方!

それじゃ……まるで藤原が自殺したみたいじゃないの!

バカなことを言わないでくれるかしら?」


「自殺ではないわ。

そのことは、彩。

貴女が一番よくわかるはずでしょ?」


ママ……?


「藤原は真面目だから、絶対、医者に言われた通りの飲み方をするはず……だろ?」


パパまで、そう言ってくれた。



「自殺じゃないとしたら、他殺……だろ?
姉さん」


「そうね」

そこまでは当たり前のロジックだ。


「薬の副作用で生命を奪うとなると、相当な医療の知識が必要となります。
私のような……」


「ねえ高沢?
薬の副作用で……どうやって殺すのよ」

イマイチ……いや、全然ピンとこない。

「藤原さんの場合、既定の量よりも、かなり多くの量を服用させたのです。

私が検視に立ち会いましたが、通常、吸入する1回分の量の5倍ものストメインが検出されています。

このストメインは、過剰に摂取すると不整脈を。

さらに酷いときは急性心不全を誘発するのです。

おそらくその作用で」

「じゃあ……誰かがその、ストメインとやらを過剰に摂取させた、ってこと?」


私がそう言うと、高沢は深く頷いた。


まさかとは思っていたが、そんな殺され方をしたなんて……


あまりにも不憫すぎる。



「誰なのよ!
その……藤原を死なせたの!」



「申し訳ございません、遅くなりました、彩お嬢様」


「そうそう。
ちょっとやることがあったのよね?」


いつの間にかリビングのドアが開いて、朝から姿を見かけなかった、矢吹の声がした。

朝、少しだけ見かけた美崎の姿もあった。

矢吹と美崎が隣にいることに、少し胸が痛んだ。






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