太陽と雪

「え……？
美崎っ…!
矢吹！」


朝はいなかった矢吹が、ある男を連れて、美崎と共に別荘に戻ってきた。

「藤原さんとやらの病状をよく知ってる人を、ピックアップしたわ。

そしたら、なぜか、高沢さん……だっけ？

貴方より、詳しい人がいたのよ。

ここにいる城竜二の専属医師だけどね」

そう言って、美崎は男の首根っこを掴む。

「何でだと思う？

ここにいる城竜二の専属医師がね、宝月家専属医師の高沢さん。

貴方が管理している電子カルテのデータをハッキングしてたのよ」


「ハッキングって……そんな……
矢吹みたいなこと……

簡単に出来るの？」

「そういえば、私の電子カルテ……藤原さんのデータのみ、無くなったことがありました」


「そうなの？
高沢……」


「はい」


「藤原さんの入院している病院の医師になりすまし、ハッキングしていたようです」


「はあ。

それで？

何で、城竜二の専属医師が藤原を殺すのよ！

意味が分からないわ！」


「落ち着いて下さいませ、彩お嬢様」

「落ち着けるわけがないでしょ？」


「いいから、その理由を説明なさい！

私は、まだ彩の家との統合を承諾したワケではない。

だから、まだ城竜二の人間よ？

血はつながっていないとはいえ、現当主の娘の命令が聞けないっていうの？」


ジャケットのポケットに片手を突っ込みながら、堂々たる物言いをする彼女。

こういうときの美崎……お嬢様、って感じね。

頼もしいわ。

ガックリと項垂れながら真相を話す城竜二の専属医師。

この別荘まで連れてきた美崎も矢吹も、放心状態になるほどあり得ない動機だった。