太陽と雪
それから2週間して、無事に椎菜は退院した。

退院したときは胸元にフリルがついたピンクのコンビネゾンに白いカーディガンを羽織っていた。

白いカーディガンを上のボタンまで留めさせ、俺がいる間は谷間がコンビネゾンの隙間から見えないようにした。

そうしないと、退院して早々屋敷に連れ込んで夜の情事をしたくなってしまうからだ。

今では椎菜も元気に大学で非常勤ではあるが講師をしているらしい。

体育での護身術講義が終わっても、英語教師の代理や、公務員講座で講義をした。

なんだかんだでたまに学校に呼ばれることがあるのは幸運だった。

そのため、朝は相沢が運転するリムジンに乗せて椎菜も一緒に門の近くまで送って行ったりした。

この感覚は高校時代を思い出させた。

別れ際は、キャンパス内の木やベンチの陰に隠れてこっそり、生徒にバレないようにキスを交わした。

ある日の帰り。

たまたま、相沢の迎えの車まで歩いていると、学校の掲示門近くで椎菜に遭遇した。

講義終わりのようだ。

ふと時計を見ると、もう夜の8時だった。


「椎菜。

今帰りなら、送ってやるから一緒に帰るか?」

「ええ。

麗眞がいいなら、そうさせてもらうわ」

そのとき、ちょうどタイミングよく相沢の運転するリムジンが俺の脇に停まった。

「本日もお疲れ様でした、坊ちゃま。
どうぞ。

椎菜さまもご一緒に、お乗りくださいませ」

「助かる、相沢」

本当に、相沢は気が利くやつだ。

「今日はね、ちょっと学生の昨日締め切りだったレポートの採点をしていたの。

1枚1枚にしっかり目を通していたら、すっかり遅くなっちゃって」

なるほど、だからいつにも増して荷物重そうなんだな。

ショルダーバッグ1つにマチの深いトートバッグだもんな……

そのトートバッグからは紺色の機械が申し訳なさそうに顔を出していた。

ノートパソコンまで持ってきてるよ……

「重かったならさ、俺に言ってくれれば椎菜ごと送ってやったのに。

病み上がりで荷物多いの、キツくないの?」

「少しは堪えるけど、講義の時間ずれてるのに悪いでしょ?

麗眞にはできるだけ迷惑かけないようにしてるの。

だって、学生にバレたら大変でしょ」

いや……
何人かはいると思うぞ?

俺と椎菜の関係に気付いているやつ。

「今日はどうする?

お望みならちゃんと椎菜の家に送ってやる。
な?相沢」


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