太陽と雪
「高沢?
俺だよ、麗眞」

『麗眞さま。

どうなさいました?
何かお身体の具合でも悪いのですか……?』

「俺じゃない。
椎菜だ。

今のところ異常はないが……

昔みたいに肺炎になられちゃ笑えない」

『分かりました。

麗眞さまがそうおっしゃるのでしたら。

すぐに向かいます。

いつものお部屋でよろしいのですね?』

「ああ。
頼む」

内線を切ると、椎菜が頬を膨らませながら拗ねた口調で言ってきた。

「私、別に風邪ひいてないじゃん」

ったく……その油断が怖いの。

「いいから。

シャワーくらい浴びてこい、椎菜。

嫁入り前の身体だぜ?

ちゃんと大事にしろ?

ちゃんとお前が着ていた可愛い服は乾かしておいてやるから。

それまでのつなぎの服。

俺のだけど我慢しろ、な?」


そう言って、グレーの上下のスウェットを手渡した。

ずぶ濡れになったせいで下着が透けているのに気付いているのかいないのか。

胸元をオレのスウェットで隠しながらシャワールームに向かった。

しばらくして、椎菜がまた戻ってきた。

「えっと、麗眞、シャワールームの場所……
忘れちゃって……。

教えてくれる?」

「この部屋出て、まっすぐ行ったところの突き当りを右に曲がると階段がある。

そこを上がってまっすぐ行ったところにある。

分からなくなったら適当な部屋に入って、電話してくれればいいから。

電話ならどこの部屋にもあるから、大丈夫。

そこで0732の番号押してな」

チークの塗りすぎかと思うくらい顔を真っ赤にして、部屋を出て行った椎菜。

ホントに、可愛いヤツ。

俺の理性をどこまで保たなくするんだ。

罪な女だな、椎菜。
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