太陽と雪
「おや、彩お嬢様。

お目覚めでしたか。

眠気に襲われるのは生理前の症状でしょうからごゆっくりお休みくださいと申し上げるおつもりが、起きていらしたとは」

なんで私の執事は、
私の生理周期を知っているのか。

もはやツッコむ気力もなかった。

「おや。

麗眞さま、ではなく、義理の妹になられる椎菜様への恩を売る活動でございますか?

自ら執事をお調べになるなど。

その方に目をつけられたのはさすが、というべきでしょう。

その方は、先月、椎菜様へ仕えさせるおつもりで旦那様が雇った方ですから。

ご本人にも、話は通っているはずでございます」

その言葉を聞いて、再び絶句すると同時に、開いた口が塞がらなかった。

さすがはパパ……

「確か、その方の息子が麗眞さまや椎菜さまと同学年だったはずでございます。

確か、ご子息のお名前は桜木桂悟(さくらぎけいご)とおっしゃったはず。

麗眞さまのご学友にリサーチすれば、情報が湧き出てくるやもしれません。

その際は、私も手伝います」

そこまで言って、矢吹は口を閉じた。

「長話をしてしまいましたね。

もう夕食の時間でございます。

時差ボケもあるでしょう。

早く夕食をお召し上がりになって、眠ってはいかがでしょう」

「眠くないのよ。

矢吹が一緒に寝てくれるなら、いい」

「正気でございますか、彩お嬢様。

私も一応、男でございます。

最愛の方と同じベッドで眠るなど、とてもできません」

「主の命令、断るのね、貴方ってば」

「彩お嬢様がお休みになるまでの間、
という条件付きなら、構いませんよ」

矢吹と同じベッドで眠るのは、初めてだ。

彼の髪から香るシャンプーの香りがアロマオイルみたいで。

日頃の寝付きの悪さが嘘みたいに、すぐに眠りに落ちたのだった。
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