太陽と雪
カクテルをご馳走になりながら、村西さんと、私の恩師の遠藤さんと夜食を囲む。

場所は別荘の近くのバーだ。

「しかし、弟さんも大変だな。

奥さんになる人に、結婚前から秘密を持たれているようじゃ、先が思いやられる」

村西さんの言葉に、遠藤さんがふるふると首を横に振った。

「気付いてるよ、多分な。

俺の可愛い後輩の深月ちゃんからの情報だ。

その麗眞くんが、彼女とその旦那に相談したそうだ。

子供へのお供えの品と、婚約者である椎菜ちゃんに重荷を一人で背負わせたことへのお詫びの品についてを。

深月ちゃんなんて、とっとと挙式して身篭らせれば罪悪感も消えるんじゃないか、って身も蓋もないアドバイスしてたみたいだけどな。

結納とクルーズ船上でのプロポーズに向けて、椎菜との交換日記を読んだ、って言ってたからな。

それを通じて、麗眞くんは知ったんだろう」

「そういえば、その椎菜ちゃんも私に言っていたわ。

麗眞の言動の節々から、私に何があったか勘付いている気がする、ってね。

実際、『何なら式場の下見でイタリア行くときにデキ婚狙うか、紙の上じゃなくてちゃんと椎菜の口から報告聞きたいし』

なんて言ってたみたいなのよ」

「蓮太郎……

彩ちゃんの親父さんにそっくりだな。

婚約者の段階から家族増やしたい宣言するところも。

全く、血は争えないってやつだな。

俺と遠藤は、その2人にいろいろと探りを入れてみるよ。

任せろ、こういうのは十八番だ」

「すみません。

私の両親の代から、遠藤さんにはお世話になりっぱなしで」

「気にしなくていい。

可愛い後輩からいろいろ事情も聞いてたしな。

宝月家が絡むと退屈しない、って彼女も言ってたよ。

まったく、彩ちゃんの弟さんもいい親友を持ったな。

深月ちゃんとその旦那の道明くん、だっけか。

彼らのためにも、サプライズ披露宴は成功させないとな」

お世話になった人にサプライズで披露宴をしたいとは、友達思いな良い弟を持ったなぁと思った。

我が弟ながら羨ましい。

「彩お嬢様。

失礼ですが、もう夜も更けてまいりました。

そろそろお休みになりませんと、お身体に障ります」

「おお、そうだったな。

後のことは俺と遠藤に任せろ。

経験豊富な年の功だからこそ、出来ることや解ることもあるからな。

あまり女性に遅くまで起きていてもらっては、健康にも肌にも悪い。

矢吹さん、だっけか?

君の執事の言う通りだ。

いい人を見初めたもんだな、彩ちゃんも。

じゃあ、おやすみ」

村西さんに、別荘まで送ってもらうと、遠藤さんと村西さん、執事の矢吹は話があるようだった。

私だけ先に眠ることにした。

「今の彩お嬢様は、身体を冷やしてはいけない時期です。

どうぞ暖かくして、おやすみくださいませ」

「そうするわ。
おやすみ、矢吹」

矢吹に挨拶をして、眠りについた。
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