太陽と雪
食堂に行ってみたが、麗眞はいなかった。


「おや、彩さま。
麗眞坊っちゃまでしたら、リビングにいらっしゃいますよ」


食事の皿を下げていた彼の執事、相沢さんが答えてくれた。


「ありがとうございます」

相沢さんにお礼を言って、食堂を出てリビングに向かった。


なにやらリビングの新聞を漁っている、麗眞がいた。

「れ……麗眞」


「ん?
姉さんか、何?」


何気なく後ろを振り返った彼に頭を下げた。


「ごめんなさい!

バカとか言って。

あと、貴方を罵倒するためだけに椎菜ちゃんのことも引き合いに出して。

あなたがまだ椎菜ちゃんのことが本当に大好きで仕方ないことを知ってるのにごめんなさい。

私も一言多かったから、貴方に同じ台詞を返すのはおかしいわね。

矢吹から聞いたわ。

貴方が刑事になった理由。

私のため……だったのね」


「当然、でしょ?

ちなみに、親父もおふくろも……仕事の合間を縫って調べてるから。

その……藤原さんのこと」

え……

そこまでは知らなかった……

「だからさ。

気が向いたときでいいから、話してよ。

藤原さんのこと。

どんな些細なことでもいいから。

情報が欲しいんだ。
藤原さんの一番近くにいたの、姉さんだろ?」


「うん……」


「俺も…悪かったよ。

藤原さんのこと……
姉さんにとっては未だにトラウマだって、気付かなかったし……。

姉さんに心の底から信頼してもらえるような警察組織にしてみせるから……さ」


「うん……
よろしく」お願いするわ」


私が刑事や検事を信頼してないってことを、麗眞は知っていた。

おそらく、相沢さんか矢吹のどちらかから聞いたんだろう。


「んで?
さっきから新聞なんか漁って、何してるの?」


「調べてたの。

その当時の新聞。

なんか現場の写真でもあればなって……」


「麗眞坊っちゃま。
旦那さまの書斎に記事がございますよ」


相沢さんに言われて気付く。
あら、そうなの?
それにしても、この食堂から遠いのよね、パパの書斎。


「行くわよ?矢吹」

何度もフラつきながら、螺旋階段の昇り降りを繰り返す。

途中からは、矢吹にお姫さま抱っこされた。

パパの書斎に行って、藤原の事件のファイルを取ってきた。


「サンキュー姉さん。

親父には、オレが持っていったことにしておくから。

姉さんが怒られることはないはず」
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