太陽と雪
「お嬢様。
彩お嬢様」
んっ……
何だろ……この声……
耳元で聞こえるんだけど、何かα波でも出てるみたいな……
落ち着く。
もう一度、寝てしまいそうだ。
「彩お嬢様。
お目覚めください」
「あれ?
矢吹……」
「はい。矢吹でございますよ。
どうかなさいましたか?
彩お嬢様」
藤原の事件のファイルがどうとかって騒いだせいで、藤原が夢に出てきたのよ。
「昨日のゴタゴタのせいで、藤原が夢に出てきたのよ。
だから忘れられないんだわ……」
「無理をして忘れる必要はないかと。
その……藤原さまの事件のことでございますが」
「な……何?
何か知っていることでもあるの?
もったいぶってないで、早く言いなさい!」
知っている、というほどのことではない。
ある場所に行けば、パパが藤原の事件について何かを隠している、という確証を得ることが出来るという。
「それは……なかなか興味深いわ。
さっそく案内してもらえるかしら」
かしこまりました、と言われて、いつものリムジンに乗せられる。
着いた先は、パパの幼なじみが夫婦と子供2人で暮らしている大きな家。
自分たちの法律事務所も兼ねているようで、敷地はかなり広い。
宝月家には負けるけれど。
パパの幼なじみはそれぞれ、弁護士と検事の仕事をしているという。
私も法廷を見学したときに、会ったことがある人だ。
インターホンを押すと、玄関のドアがゆっくり開いた。
華恵さんのもう一人の娘、優華ちゃんがドアを開けてくれた。
もう、優華の姉の優美は行政書士事務所でアシスタントとして働いているはずだ。
就職祝いに、名刺入れと新社会人らしいパスケースを送ったことを覚えている。
世間様が平日なのに家にいるのは、春休みだから。
学生は休みがあって少し羨ましい。
彼女は父親の身長の高さを受け継いだようで、身長は私より高い。
春らしいデニム素材のワイドパンツがよく似合っている。
家で過ごすには似つかわしくない、鎖骨が見えるレースのシフォンブラウスを着ているのは、
これから誰かと待ち合わせなのだろうか。
そんな優華ちゃんの後ろから、黒いニットとボルドーのスカートを着こなした、笑顔の素敵な女性がいらっしゃいと言って顔を出した。
御劍 華恵さん。
この女性こそ、パパの幼馴染だ。
……華恵さん。
パパが学生の頃、今の華恵さんの夫である優作さんと、華恵さんとで三角関係だったらしい。
長いまつ毛と意思の強い黒目と、輪郭のハッキリした眉が印象的な女性だ。
身長は、私と同じくらい。
「この人?お客さんって。
って、あ!彩お姉さん!
あ、その節は、お世話になりました!
高校の入学祝いで頂いた財布、この間友達に褒められたんですよ。
素敵な品をありがとうございます!」
丁寧に身体を折り曲げて、お礼を言ってくれる優華ちゃん。
礼儀正しいところは、父親に似たのだろうか。
「彩ちゃん。
久しぶりね!
あらあら、随分と大人の女性の色気が出てきたこと。
ほんと、お母さんに似てきたわね。
それで、今日はレンを迎えに来たの?」
優華ちゃんと華恵さんの言葉で分かった。
パパは今、この家にいるんだ……
何で?
「いいえ。
今日の用事は、宝月家当主、蓮太郎ではありません。
華恵さんにお話しがあるんです。
2人きりで」
「お嬢様……単刀直入すぎやしませんか」
困ったような表情で私に耳打ちする矢吹。
不覚にもドキドキした。
彼の吐息が耳にかかり、気恥ずかしい。
華恵さんに、顔が赤いのがばれないように願いながら、彼にも一緒に来るように目で合図をした。
彩お嬢様」
んっ……
何だろ……この声……
耳元で聞こえるんだけど、何かα波でも出てるみたいな……
落ち着く。
もう一度、寝てしまいそうだ。
「彩お嬢様。
お目覚めください」
「あれ?
矢吹……」
「はい。矢吹でございますよ。
どうかなさいましたか?
彩お嬢様」
藤原の事件のファイルがどうとかって騒いだせいで、藤原が夢に出てきたのよ。
「昨日のゴタゴタのせいで、藤原が夢に出てきたのよ。
だから忘れられないんだわ……」
「無理をして忘れる必要はないかと。
その……藤原さまの事件のことでございますが」
「な……何?
何か知っていることでもあるの?
もったいぶってないで、早く言いなさい!」
知っている、というほどのことではない。
ある場所に行けば、パパが藤原の事件について何かを隠している、という確証を得ることが出来るという。
「それは……なかなか興味深いわ。
さっそく案内してもらえるかしら」
かしこまりました、と言われて、いつものリムジンに乗せられる。
着いた先は、パパの幼なじみが夫婦と子供2人で暮らしている大きな家。
自分たちの法律事務所も兼ねているようで、敷地はかなり広い。
宝月家には負けるけれど。
パパの幼なじみはそれぞれ、弁護士と検事の仕事をしているという。
私も法廷を見学したときに、会ったことがある人だ。
インターホンを押すと、玄関のドアがゆっくり開いた。
華恵さんのもう一人の娘、優華ちゃんがドアを開けてくれた。
もう、優華の姉の優美は行政書士事務所でアシスタントとして働いているはずだ。
就職祝いに、名刺入れと新社会人らしいパスケースを送ったことを覚えている。
世間様が平日なのに家にいるのは、春休みだから。
学生は休みがあって少し羨ましい。
彼女は父親の身長の高さを受け継いだようで、身長は私より高い。
春らしいデニム素材のワイドパンツがよく似合っている。
家で過ごすには似つかわしくない、鎖骨が見えるレースのシフォンブラウスを着ているのは、
これから誰かと待ち合わせなのだろうか。
そんな優華ちゃんの後ろから、黒いニットとボルドーのスカートを着こなした、笑顔の素敵な女性がいらっしゃいと言って顔を出した。
御劍 華恵さん。
この女性こそ、パパの幼馴染だ。
……華恵さん。
パパが学生の頃、今の華恵さんの夫である優作さんと、華恵さんとで三角関係だったらしい。
長いまつ毛と意思の強い黒目と、輪郭のハッキリした眉が印象的な女性だ。
身長は、私と同じくらい。
「この人?お客さんって。
って、あ!彩お姉さん!
あ、その節は、お世話になりました!
高校の入学祝いで頂いた財布、この間友達に褒められたんですよ。
素敵な品をありがとうございます!」
丁寧に身体を折り曲げて、お礼を言ってくれる優華ちゃん。
礼儀正しいところは、父親に似たのだろうか。
「彩ちゃん。
久しぶりね!
あらあら、随分と大人の女性の色気が出てきたこと。
ほんと、お母さんに似てきたわね。
それで、今日はレンを迎えに来たの?」
優華ちゃんと華恵さんの言葉で分かった。
パパは今、この家にいるんだ……
何で?
「いいえ。
今日の用事は、宝月家当主、蓮太郎ではありません。
華恵さんにお話しがあるんです。
2人きりで」
「お嬢様……単刀直入すぎやしませんか」
困ったような表情で私に耳打ちする矢吹。
不覚にもドキドキした。
彼の吐息が耳にかかり、気恥ずかしい。
華恵さんに、顔が赤いのがばれないように願いながら、彼にも一緒に来るように目で合図をした。