太陽と雪
しばらく、ご飯を食べたりして時間をつぶした。

宝月の屋敷以外で、この面子でご飯を食べるというのは、新鮮だった。


そしていよいよ!

チケットを取ったアトラクションへ。


「やっと乗れるわね。
待ちくたびれたわ」


アトラクションを降りる度、麗眞が抱腹絶倒するのだ。

「姉さん、矢吹さんの腕、もぎ取らんばかりにしがみついてんの、ほんと笑えるんだけど!

矢吹さん、大丈夫?

腕、取れてない?」

「私は大丈夫でございます。

お嬢さまごときの腕力で腕がもげるほど、ヤワな鍛え方はしておりません。

麗眞さま、ご心配してくださり、感謝します」


さっきのとか、いろんなアトラクションに乗って分かったこと。

私、コースターが降下するときが怖い。


無事に生還した私だけど、全然生きた心地がしなかった。

そりゃ、人が動かすものなんだから、途中で止まったりしたら怖いし。


ただひたすら、アトラクションについている手すりだけでは飽き足らず、矢吹の腕にまでしがみついていた。

仕方ないじゃない。

怖いんだから!


「大丈夫でございますか?
彩お嬢様。
私としては、アトラクションよりも彩お嬢様のリアクションのほうが楽しかったのです」


「ちょっと矢吹っ!!
まったくもう、人が怖がっているのを見て面白がらないでよ……」


「ご無礼を。

彩お嬢様。

それにしても、声が大きいでございますよ、もう少しお静かに……」


「そうさせたのは誰のせいよ!!」


などと押し問答していると、麗眞と相沢さんが4人分のチケットを持ってやって来た。


「はい、姉さん。
よし。

これでこのテーマパークの絶叫系は全制覇だ。
姉さんはホッと出来るな。

あ、ごめん。

あと1つあった。

しかも、濡れるらしい。
姉さんにとっては災難だな」


花火の時間までかなりある。
またしばらく時間をつぶすことにした。


しばらくぶらぶらしていると、レーシングカー発見。

「2人で乗れるらしいですよ。
一緒なのが私でよろしければ、ご乗車になりますか?」


「矢吹。

私、貴方と乗るなんて、一言も言ってないわよ?」


「そうでなくても、私は彩お嬢様の執事でございますので」


う……
二の句が継げないとはこのことだ。

「わ……分かったわよ。
矢吹。

私の運転テクニックに、腰抜かさないことね」


隣にいた麗眞と相沢さんの車を、易々と追い抜く。


ゴール地点に着いたとき、矢吹は頭を抱えて一言、私に告げた。

「彩お嬢様。

私には、なぜ彩お嬢様が車の運転免許を取得出来たのか、分かりかねます……」


スピード……出しすぎたみたいね…


やっぱり、矢吹はたまに運転してるからか、ハンドルさばきとかも……見ていて落ち着く。


この件を麗眞に話すと、案の定、彼にも爆笑された。

「ホント、笑わせてくれるな、姉さん。

親父とおふくろへの土産話にするか」

もういいわよ。

二度と車なんて運転しない。
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