太陽と雪
肩を揺すられて、起こされる。

「お嬢様?

すでにご夕食の準備が整っているそうでございますよ。

参りましょう」


目覚めて最初の言葉がそれなの?

「痛っ……
貴方ねぇ!

もっとゆっくり歩きなさいよ!

靴擦れして痛いんだからっ……
貴方それでも執事?」


文句を言いながら、部屋の玄関に置いてあったブーサンを履く。


あ……れ…?

大分、歩きやすい……!
というか、痛みを感じない!


「お気に召しましたか?
彩お嬢様。

靴擦れの箇所が靴に当たらないこと、

ヒールが5センチメートルと最初のものより低いことを考慮致しました」


まさか……矢吹が選んでくれたの?


「ふふ。
なかなかやるじゃない」

律儀に頭を下げる彼を見て、ちょっと優越感を覚えた。


レストランで席に着いたとき、エスコートしてくれるまではいい。

そこまでは、宝月の屋敷でみられる、ごく普通の光景だ。

やめなさいよ!!

傍らにそうやっていられると、落ち着かないの!!

使用人は、仕えている主人が食事をしているときは、断固として同じテーブルで食事をとらないらしい。

相沢さんにも聞いたが、最初は、そのように教育されるらしい。


「座りなさい、矢吹。

ここ、宝月の家じゃないのよ?

従えないなら、この場で解雇にしてあげてもいいのよ?

郷に入っては郷に従えっていうじゃない。

今日くらいは、いいえ、ここにいる間だけは細かいしきたりは忘れてもいいのではなくて?

私たちお嬢さまだけじゃない、執事も、羽を伸ばさないとね」


「失礼致しました。

では……お言葉に甘えて着席させていただきます」


ビュッフェ形式のフレンチを食べ終えたところで、1度部屋に戻った。


「参りましょう、お嬢様」

「え?
どこによ……」


「花火見物でございますよ、もちろん。

テーマパーク内で観覧出来るそうでございます」


「行く、行く!!」


さっそく、矢吹に連れられてテーマパーク内に入る。


「すっごい!
綺麗!」


生まれて初めての花火。

小さい頃は、何で火薬からあんな光と音の華が生まれるのか、と疑問に思った。

確かにキレイだった。

テーマパークで有名なキャラクターを模した花火もあったり、目の保養になった。


「何で、花火でそんなテンション上がるの?」


なんて、いつの間にかホテルに戻っていたらしい麗眞は呆れてたけど。

女性は好きなのよ、こういうの!
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