太陽と雪
「とにかく、俺は椎菜を探すから。
ったく、椎菜のヤツ、自分が可愛い自覚が微塵もないからな。
どっかで変な野郎に襲われてないかだけが心配だ」
そう言って、俺は部屋を出てホテルの廊下を早足で歩いた。
「大丈夫でしょうか……
麗眞坊っちゃまお一人で……」
「まあ……麗眞さまも刑事ですからね。
護身術くらいは心得ておりますし。
さて、我々も、ここで麗眞さまの帰りを雑談しながら待ってるわけにも参りません。
給料分くらいは、いえ、給料分以上に働かなければなりませんよ?」
その数十分後、俺の携帯に椎菜の部屋番号がメールで送られてきた。
矢吹さんがこのホテルの顧客情報をハッキングしたらしい。
相当な手練れだな、矢吹さん。
椎菜のわずかな情報のみを、ほんのわずかな時間で的確に集めるなんて……
相当な経験を積んでいないと出来ない。
その番号を頼りに、椎菜の部屋に向かう。
その部屋の前で1人の女性が立ち往生していた。
デニムシャツをしっかりと花柄のスカートにインしている、俺より20cmくらい背の低い女性だ。
スカートの生地はピンク色だが、デザインされている花は青色で。
デニムと花柄の青が色のトーンは違えどリンクしている。
だからスカートの色味がピンクでもうるさくなりすぎない。
流石は椎菜だ。
母親がモデルだという血をしっかり受け継いでいる。
また、デニムシャツの上からでも二つの豊かな膨らみが主張していて、俺はそちらに目を奪われる。
足元は茶色のレースアップシューズ。
少しヒールはあるが低めだ。
それには見覚えがあった。
距離を置こうと告げられたあの日、椎菜が履いていたものと同じものだ。
あの日より少し染められた茶色い髪は、胸の辺りで内側にカールされていた。
また、当時は開いていなかった両耳の小さな穴からはハートが幾重にも垂れ下がっていた。
彼女に近づくと、爽やかな香りが鼻腔を刺激した。
香水の匂いは、まだ俺が高校生だった頃、彼女の誕生日プレゼントにあげたものだった。
椎菜に間違いなかった。
離れていても、その姿を、名前を、声を思い出さない日はなかったから。
「椎菜?」
声を掛けて振り向いた女性の目は大きく見開かれた。
俺は、本能的に彼女に近付いた。
そして、再会する前より確実に華奢になった身体を腕の中に収めていた。
「久しぶり。椎菜。
こんなとこで会うなんて偶然だね。
しばらく見ないうちにちょっと痩せた?」
「れ…麗眞……
うん、そうかも。
痩せた、かな。
それで、ちょっと今困っているところなの。
あの……その……ね、部屋のルームキーを落としちゃったみたいなの。
私……ドジだよね、ホントに」
少なからず、俺の顔を見れて、声を聞けて。
嬉しいのか動揺しているのかは、声色だけでは読み取れない。
だが。
そっと俺の背中に華奢な手を回してくれている辺り、拒否反応はない。
ヨリ戻せるって、期待していてもいいかな?
そのためには、彼女の今の困りごとを解決するほうが先だ。
なるほど……部屋に入れないワケか。
それは困る。
デニムシャツの上からでも分かる大きさの胸が若く、健全な男を欲情させないわけがない。
いつまでもこんなに可愛い格好で、こんなところに居させていいはずがないのだ。
名残惜しいが、椎菜の線が細い身体を腕から解放する。
ったく、椎菜のヤツ、自分が可愛い自覚が微塵もないからな。
どっかで変な野郎に襲われてないかだけが心配だ」
そう言って、俺は部屋を出てホテルの廊下を早足で歩いた。
「大丈夫でしょうか……
麗眞坊っちゃまお一人で……」
「まあ……麗眞さまも刑事ですからね。
護身術くらいは心得ておりますし。
さて、我々も、ここで麗眞さまの帰りを雑談しながら待ってるわけにも参りません。
給料分くらいは、いえ、給料分以上に働かなければなりませんよ?」
その数十分後、俺の携帯に椎菜の部屋番号がメールで送られてきた。
矢吹さんがこのホテルの顧客情報をハッキングしたらしい。
相当な手練れだな、矢吹さん。
椎菜のわずかな情報のみを、ほんのわずかな時間で的確に集めるなんて……
相当な経験を積んでいないと出来ない。
その番号を頼りに、椎菜の部屋に向かう。
その部屋の前で1人の女性が立ち往生していた。
デニムシャツをしっかりと花柄のスカートにインしている、俺より20cmくらい背の低い女性だ。
スカートの生地はピンク色だが、デザインされている花は青色で。
デニムと花柄の青が色のトーンは違えどリンクしている。
だからスカートの色味がピンクでもうるさくなりすぎない。
流石は椎菜だ。
母親がモデルだという血をしっかり受け継いでいる。
また、デニムシャツの上からでも二つの豊かな膨らみが主張していて、俺はそちらに目を奪われる。
足元は茶色のレースアップシューズ。
少しヒールはあるが低めだ。
それには見覚えがあった。
距離を置こうと告げられたあの日、椎菜が履いていたものと同じものだ。
あの日より少し染められた茶色い髪は、胸の辺りで内側にカールされていた。
また、当時は開いていなかった両耳の小さな穴からはハートが幾重にも垂れ下がっていた。
彼女に近づくと、爽やかな香りが鼻腔を刺激した。
香水の匂いは、まだ俺が高校生だった頃、彼女の誕生日プレゼントにあげたものだった。
椎菜に間違いなかった。
離れていても、その姿を、名前を、声を思い出さない日はなかったから。
「椎菜?」
声を掛けて振り向いた女性の目は大きく見開かれた。
俺は、本能的に彼女に近付いた。
そして、再会する前より確実に華奢になった身体を腕の中に収めていた。
「久しぶり。椎菜。
こんなとこで会うなんて偶然だね。
しばらく見ないうちにちょっと痩せた?」
「れ…麗眞……
うん、そうかも。
痩せた、かな。
それで、ちょっと今困っているところなの。
あの……その……ね、部屋のルームキーを落としちゃったみたいなの。
私……ドジだよね、ホントに」
少なからず、俺の顔を見れて、声を聞けて。
嬉しいのか動揺しているのかは、声色だけでは読み取れない。
だが。
そっと俺の背中に華奢な手を回してくれている辺り、拒否反応はない。
ヨリ戻せるって、期待していてもいいかな?
そのためには、彼女の今の困りごとを解決するほうが先だ。
なるほど……部屋に入れないワケか。
それは困る。
デニムシャツの上からでも分かる大きさの胸が若く、健全な男を欲情させないわけがない。
いつまでもこんなに可愛い格好で、こんなところに居させていいはずがないのだ。
名残惜しいが、椎菜の線が細い身体を腕から解放する。