太陽と雪
異変
重厚な作りのホテルエントランスをくぐって吹き抜けになっているロビーを通る。
ふと、私の部屋の前に、見覚えのある人物が立っていた。
いつもの作業着ではなく、Tシャツにベスト、ジーンズだった。
「岳さんっ……!?
何でここに……?」
「これはこれは、彩お嬢様。
大変お久しぶりでございます。
すっかり大人の女性になられて。
私は矢吹さんに頼まれたお荷物を運んだだけでございます。
どうぞごゆっくり、おくつろぎくださいませ」
山中 岳さんは、宝月家専属の宅配業者。
まさか……岳さんも、このホテルに泊まっているのかしら。
「ところで……矢吹?
貴方……岳さんに何を頼んだの?」
「お嬢様。
この袋をお開け下されば……自ずから分かることでございますよ」
勿体つけてはいるが、その柔らかい口調に、つい、袋に手が伸びる。
いいのかな……開けて。
矢吹の顔をチラ見してみると、ゆっくり、首を縦に動かしていた。
思いきって開封し、袋の中のものを丁寧に床で並べてみる。
「これ……!」
テーマパーク内の『ロミオとジュリエット』のヒロインにゆかりのある店で、購入を諦めた品々だった。
「矢吹っ……
何で……何で今コレがここにあるの…?」
「お嬢様。
あの店のスタッフにお願いして、取り置きをお願いしたのでございますよ。
その品々を、岳さまに、店から取ってきて一緒にホテルまで配送するよう、お願いしたのでございます」
「そ……そんなことしてたのね……」
「はい。
押し付けがましいことを致しました。
しかし、お嬢様の幸せこそが私ども執事の幸せ、でございますので」
そう言って、ペコッと頭を下げた矢吹。
「べ……別に、怒ってないわよ?
むしろ、嬉しいくらいよ。
多少、品が減っているのは、貴方が減らしたのよね?
家に似たようなものが置いてあるか何かで」
「さすが、彩お嬢様。
旦那さまに似て、カンがよろしゅうございます」
ま、一応、パパの娘だしね?
遊び回ったのでお腹が空いているだろうと、夕食を食べることにした。
上質なフレンチは宝月家で雇うシェフより味や見た目の綺麗さでは劣るものの、私の胃を満足させてくれた。
ふと、私の部屋の前に、見覚えのある人物が立っていた。
いつもの作業着ではなく、Tシャツにベスト、ジーンズだった。
「岳さんっ……!?
何でここに……?」
「これはこれは、彩お嬢様。
大変お久しぶりでございます。
すっかり大人の女性になられて。
私は矢吹さんに頼まれたお荷物を運んだだけでございます。
どうぞごゆっくり、おくつろぎくださいませ」
山中 岳さんは、宝月家専属の宅配業者。
まさか……岳さんも、このホテルに泊まっているのかしら。
「ところで……矢吹?
貴方……岳さんに何を頼んだの?」
「お嬢様。
この袋をお開け下されば……自ずから分かることでございますよ」
勿体つけてはいるが、その柔らかい口調に、つい、袋に手が伸びる。
いいのかな……開けて。
矢吹の顔をチラ見してみると、ゆっくり、首を縦に動かしていた。
思いきって開封し、袋の中のものを丁寧に床で並べてみる。
「これ……!」
テーマパーク内の『ロミオとジュリエット』のヒロインにゆかりのある店で、購入を諦めた品々だった。
「矢吹っ……
何で……何で今コレがここにあるの…?」
「お嬢様。
あの店のスタッフにお願いして、取り置きをお願いしたのでございますよ。
その品々を、岳さまに、店から取ってきて一緒にホテルまで配送するよう、お願いしたのでございます」
「そ……そんなことしてたのね……」
「はい。
押し付けがましいことを致しました。
しかし、お嬢様の幸せこそが私ども執事の幸せ、でございますので」
そう言って、ペコッと頭を下げた矢吹。
「べ……別に、怒ってないわよ?
むしろ、嬉しいくらいよ。
多少、品が減っているのは、貴方が減らしたのよね?
家に似たようなものが置いてあるか何かで」
「さすが、彩お嬢様。
旦那さまに似て、カンがよろしゅうございます」
ま、一応、パパの娘だしね?
遊び回ったのでお腹が空いているだろうと、夕食を食べることにした。
上質なフレンチは宝月家で雇うシェフより味や見た目の綺麗さでは劣るものの、私の胃を満足させてくれた。