太陽と雪
私は、相沢や麗眞さま、高沢とともに、彩お嬢様の部屋にいた。


「申し訳ございません。

麗眞さまにも、多大なるご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」

そして、麗眞さまと相沢に、何度も頭を下げて必死に謝罪した。


「謝らなくていいよ。
姉さんには、何も手を出されてないんだしさ」

「しかし……」


「俺だったんだろ?

城竜二 美崎の狙いは。

考えてもみろよ。

俺も、相沢も。

城竜二 美崎が椎菜に持ち掛けた取り引き。

……あの会話を聞いている。

その証拠を掴みたかったんだよ、おそらく。

俺が持ってると思ったんじゃね?

それが録音された盗音機の類いを。

そして、俺にあの薬が入ったカクテルを飲ませて奪うつもりだったんだろう」


「さすが、麗眞坊っちゃま。
プロの刑事であらせられますね!」


「当たり前だろ?

これくらいのこと……誰でも察しが付く」


「しかし……城竜二 美崎の手違いで、麗眞さまに渡るはずのグラスが、彩お嬢様に渡ってしまった、
ということでございますね」


「そう……だな。
そうとしか考えられない」


「しかし……矢吹さん……

城竜二 美崎さまは……彩さまのご学友だったのではありませんか?

仮にもご友人が、そのようなことをするでしょうか?」


「そうでございます。

彩お嬢様が、小学校のときはよく遊んでいた仲だったが、中学校は別。

高校のときに再会したと仰っておりました。
同じクラスになったことはないようでございますが」

「そっか……」


「城竜二財閥……

裏社会で相当のリーダーだそうですよ。

人身売買の売上高はトップだと専らの噂でございます」


「そんな怪しい匂いのする財閥だったっけ?」

「父親が突然の飛行機墜落事故で亡くなったことがキッカケになったようです。

それまで、その父親が歯止めをかけていたそうですが、それがきかなくなった。

そして、今のように裏社会に勢力を伸ばすようになったそうです」


彩お嬢様が聞いておられたら……

ショックでございますね……

その時は私がお側におります、彩お嬢様。

「姉さん……まだ起きないの?
高沢さん」


麗眞さまが心配そうな声で言う。


「ガンマヒドロキシ酪酸…

この睡眠薬が切れるのは、大体2時間後でござい
ます。

薬の効能にも、個人差がございますゆえ……

彩さまの場合、いつ頃薬が切れるかは、私にも分かりかねます」


「ちなみに、旦那さまは薬が効きづらい体質でございます。

奥様は……その逆でございます」


高沢が補足する。


なるほど……


彩お嬢様が薬で眠らされてから、2時間15分が経過した頃だった。


「んっ……
や……ぶき……?」


お目覚めですね、彩お嬢様。
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