太陽と雪
私は彩お嬢様の頭を優しく撫でる。
すると、落ち着いたのか、私が聞かずともお嬢様自ら、ポツリポツリと話してくれた。
「やっと忘れられるって……
そう思ってたのに……」
「いいのですよ、彩お嬢様。
たまにでも思い出してくれたほうが、藤原さまも嬉しいはずですし」
「あれじゃ……
あんなの見ちゃったら……無理よ……
忘れられないわよ」
「彩お嬢様!?
何かあったのですか?」
「1人で寂しかったから、ずっと部屋にいてもつまらなかった。
矢吹もいないし。
部屋から出て、高沢さんの部屋に行こうとしたの。
そしたら、段差に引っ掛かって転んでしまったの」
彩お嬢様の話によれば、転んだ彩お嬢様を助けてくれた男が藤原に似ていたという。
確かに、ふとしたら聞き逃してしまいそうなくらい小さな声だったわ。
でも、確かに聞いたの。
「相変わらず……可愛らしいのでございますね……
彩お嬢様」
と言ってにっこり微笑んでから、美崎さまの元に歩いて行ったという。
しばらく呆然としていたところに、高沢が来たのだそうだ。
「まさか……藤原のそっくりさん?
そんなワケないか。
でもそれにしては……声が少しだけ違っていたし」
「ここでは、他人の空似、ということにしておきましょう。
今度こそ、ごゆっくりお休みくださいませ、彩お嬢様。
今、彩お嬢様はただでさえ混乱していらっしゃるのですから」
「……嫌よ。
矢吹が一緒にいてくれるならいいけど」
そう言って、私の手を掴んできた。
それだけでは飽き足らず、先程と同じように私の胸に顔を埋めている。
「お嬢様!?
そのようなことは、おやめくださいませ……
私も、一応男でございます」
「落ち着くのよ……
貴方、手暖かいから……
手、握ってて?
お願い……」
私は、彩お嬢さまの上目遣いには、めっぽう弱い。
どんなときでも、お嬢さまの願いを叶えて差し上げるのが、執事としての職務だ。
「かしこまりました。
お嬢さまのお願いでしたら、なんなりと」
ぎゅっ……
強めに手を握り返して差し上げると、
安心したように寝息を立て始めたお嬢様。
「私が……藤原のことなど、忘れさせてさしあげますよ……
彩お嬢様」
すると、落ち着いたのか、私が聞かずともお嬢様自ら、ポツリポツリと話してくれた。
「やっと忘れられるって……
そう思ってたのに……」
「いいのですよ、彩お嬢様。
たまにでも思い出してくれたほうが、藤原さまも嬉しいはずですし」
「あれじゃ……
あんなの見ちゃったら……無理よ……
忘れられないわよ」
「彩お嬢様!?
何かあったのですか?」
「1人で寂しかったから、ずっと部屋にいてもつまらなかった。
矢吹もいないし。
部屋から出て、高沢さんの部屋に行こうとしたの。
そしたら、段差に引っ掛かって転んでしまったの」
彩お嬢様の話によれば、転んだ彩お嬢様を助けてくれた男が藤原に似ていたという。
確かに、ふとしたら聞き逃してしまいそうなくらい小さな声だったわ。
でも、確かに聞いたの。
「相変わらず……可愛らしいのでございますね……
彩お嬢様」
と言ってにっこり微笑んでから、美崎さまの元に歩いて行ったという。
しばらく呆然としていたところに、高沢が来たのだそうだ。
「まさか……藤原のそっくりさん?
そんなワケないか。
でもそれにしては……声が少しだけ違っていたし」
「ここでは、他人の空似、ということにしておきましょう。
今度こそ、ごゆっくりお休みくださいませ、彩お嬢様。
今、彩お嬢様はただでさえ混乱していらっしゃるのですから」
「……嫌よ。
矢吹が一緒にいてくれるならいいけど」
そう言って、私の手を掴んできた。
それだけでは飽き足らず、先程と同じように私の胸に顔を埋めている。
「お嬢様!?
そのようなことは、おやめくださいませ……
私も、一応男でございます」
「落ち着くのよ……
貴方、手暖かいから……
手、握ってて?
お願い……」
私は、彩お嬢さまの上目遣いには、めっぽう弱い。
どんなときでも、お嬢さまの願いを叶えて差し上げるのが、執事としての職務だ。
「かしこまりました。
お嬢さまのお願いでしたら、なんなりと」
ぎゅっ……
強めに手を握り返して差し上げると、
安心したように寝息を立て始めたお嬢様。
「私が……藤原のことなど、忘れさせてさしあげますよ……
彩お嬢様」