太陽と雪
〈彩side〉
矢吹から言われて、部屋の外の廊下に出た。
私を待っている人がいるらしい。
誰なのよ!
「彩……さん?
お久しぶりです」
早朝の澄みきった空を思わせる、透明感のある声音。
それからは想像も付かない、メスで切ってしまったという、手の甲の無数の傷跡。
「椎菜……ちゃん……!?」
「ええ。
ホントに久しぶり……ですね。
また……一段と可愛らしくなられて……
やっぱり……美人の遺伝子は違うのかな」
そういう椎菜ちゃんも、はっきりした二重の可愛い瞳をしている。
母親がスタイリスト兼モデル兼女優の血は争えない。
この人は、矢榛 椎菜。
彼女の祖母と同じく、獣医をしている。
おばあちゃん子だからなのか、獣医としての腕はピカイチ。
私服がオシャレな点は、モデルである母親の遺伝子を強く受け継いだらしい。
オシャレだねと誉めると、彩さんのセレブな雰囲気には敵わないなどと言ってくる。
全く、誉めてもなにも出ないわよ。
この椎菜ちゃん、私のバカな弟、麗眞のことが大好きらしい。
何だかんだで、幼少の頃からお互い仲が良かった。
高校の頃は学校でも公認の仲だった、と記憶している。
私も傍から見ていて蕁麻疹が出そうになるくらい、ラブラブだった。
まあ、麗眞はアイドル業のパパの遺伝子を受け継いだらしく、イケメンの部類に入る。
椎菜ちゃんも、麗眞の誘いで私たちの屋敷に来たことは何度もある。
どうせ下世話な弟のことだ、彼女を睡眠不足にさせるほどイチャイチャしていたのだろう。
彼女が急遽屋敷に泊まることになると、私が下着やルームウェアの類を貸していた。
まだ……藤原がいた頃によく来ていた。
だから当然、彼の顔も知っている。
最近は獣医で忙しいのか来ることはなくて、最後に来たのは2年前。
その時は……麗眞がいないって知ってすぐ帰ったっけ。
それが何だか寂しかった。
「行きましょ?
彩さん」
お風呂入りながら聞き出してやるわ。
あんなバカのどこが好きなのか。
それと……このホテルに……本当にいるのかどうか。
藤原らしき……人物が。
何回か藤原とも会話を交わしたことのある彼女なら、分かる気がする。
矢吹から言われて、部屋の外の廊下に出た。
私を待っている人がいるらしい。
誰なのよ!
「彩……さん?
お久しぶりです」
早朝の澄みきった空を思わせる、透明感のある声音。
それからは想像も付かない、メスで切ってしまったという、手の甲の無数の傷跡。
「椎菜……ちゃん……!?」
「ええ。
ホントに久しぶり……ですね。
また……一段と可愛らしくなられて……
やっぱり……美人の遺伝子は違うのかな」
そういう椎菜ちゃんも、はっきりした二重の可愛い瞳をしている。
母親がスタイリスト兼モデル兼女優の血は争えない。
この人は、矢榛 椎菜。
彼女の祖母と同じく、獣医をしている。
おばあちゃん子だからなのか、獣医としての腕はピカイチ。
私服がオシャレな点は、モデルである母親の遺伝子を強く受け継いだらしい。
オシャレだねと誉めると、彩さんのセレブな雰囲気には敵わないなどと言ってくる。
全く、誉めてもなにも出ないわよ。
この椎菜ちゃん、私のバカな弟、麗眞のことが大好きらしい。
何だかんだで、幼少の頃からお互い仲が良かった。
高校の頃は学校でも公認の仲だった、と記憶している。
私も傍から見ていて蕁麻疹が出そうになるくらい、ラブラブだった。
まあ、麗眞はアイドル業のパパの遺伝子を受け継いだらしく、イケメンの部類に入る。
椎菜ちゃんも、麗眞の誘いで私たちの屋敷に来たことは何度もある。
どうせ下世話な弟のことだ、彼女を睡眠不足にさせるほどイチャイチャしていたのだろう。
彼女が急遽屋敷に泊まることになると、私が下着やルームウェアの類を貸していた。
まだ……藤原がいた頃によく来ていた。
だから当然、彼の顔も知っている。
最近は獣医で忙しいのか来ることはなくて、最後に来たのは2年前。
その時は……麗眞がいないって知ってすぐ帰ったっけ。
それが何だか寂しかった。
「行きましょ?
彩さん」
お風呂入りながら聞き出してやるわ。
あんなバカのどこが好きなのか。
それと……このホテルに……本当にいるのかどうか。
藤原らしき……人物が。
何回か藤原とも会話を交わしたことのある彼女なら、分かる気がする。