太陽と雪
さっそく、お互いに身体を洗い終えてジャクジー付きのお風呂に浸かる。
少し身体が温まったところで、椎菜ちゃんに、麗眞の好きなところを聞く。
「麗眞、最初は彩さんのことばっかり話してました。
相当のシスコンだなって思いましたけど……
お姉さんも……麗眞にとっては大事な人なんだなって。
お姉さん想いなところも含めて、大好きで。
幼少の頃、私がお気に入りの帽子を風に飛ばされたことがあったんです。
危ないのに迷わず木に登って取ってくれて。
カッコよくて、そこから気付けば麗眞ばっかり目で追ってて。
そこからです、本気で男の人として麗眞を意識したのは。
一目惚れでした」
椎菜ちゃんが、ニコニコしながら麗眞の良いところを挙げていっている。
いくつあるんだろう。
あのいつも余計な一言が多いバカの、どこがいいんだか。
「だけど、少し後悔もしていて。
高校から大学に入った頃は、私も未熟で、自己中で。
自分たちのことしか、見えてなかった。
カナダまでわざわざ行ったのは、顔を見たかったからで、喧嘩したいわけじゃなかった。
だけど、獣医学部の研修やら実習やらで忙しくなっていった。
カナダへ行くための旅費もバイトして貯めなくちゃだった。
麗眞とのビデオ通話の時間も取れなくなっていって。
寂しい気持ちが止まらなくなって。
こんなに寂しくなるくらいなら、会わなくていいかもって、思っちゃったんです。
『宝月家を麗眞が継いだとき、隣にいる貴方に依存しないで、相応しい振る舞いができるかどうかを、ちゃんと自分で確かめたい。
だから麗眞とは少し距離を置きたい』
そんなもっともらしいことを言って。
本心は、遠距離恋愛に耐えられなくて、高校の時みたいにずっと一緒にいたいって麗眞に言いたかったのに。
高校の頃とは環境も違って、お互いの生活もある。
子供っぽいって思われて愛想尽かされるんじゃないか、って思ってしまって。
どうしても言えなかったんです。
それに、麗眞との子供をお腹に宿して、少しの間母親になって。
だけど流産したことも。
言いづらいことがあったら書くことにした交換日記には書いたけど。
それも結局直接は言えなくて。
……馬鹿ですよね、私。
今でも麗眞のこと、こんなに好きなのに。
私があんなことを言わなかったら、今頃は麗眞の隣で幸せに過ごしていられたのかな」
そうこぼした椎菜ちゃんの顔に先程までの笑顔はなかった。
今にも髪色に似て茶色がかった目からは大粒の涙が零れ落ちそうだった。
私にだからこそ言える、椎菜ちゃんの心からの本音。
他の誰でもない、私に溢してくれたことが、少し嬉しかった。
少し身体が温まったところで、椎菜ちゃんに、麗眞の好きなところを聞く。
「麗眞、最初は彩さんのことばっかり話してました。
相当のシスコンだなって思いましたけど……
お姉さんも……麗眞にとっては大事な人なんだなって。
お姉さん想いなところも含めて、大好きで。
幼少の頃、私がお気に入りの帽子を風に飛ばされたことがあったんです。
危ないのに迷わず木に登って取ってくれて。
カッコよくて、そこから気付けば麗眞ばっかり目で追ってて。
そこからです、本気で男の人として麗眞を意識したのは。
一目惚れでした」
椎菜ちゃんが、ニコニコしながら麗眞の良いところを挙げていっている。
いくつあるんだろう。
あのいつも余計な一言が多いバカの、どこがいいんだか。
「だけど、少し後悔もしていて。
高校から大学に入った頃は、私も未熟で、自己中で。
自分たちのことしか、見えてなかった。
カナダまでわざわざ行ったのは、顔を見たかったからで、喧嘩したいわけじゃなかった。
だけど、獣医学部の研修やら実習やらで忙しくなっていった。
カナダへ行くための旅費もバイトして貯めなくちゃだった。
麗眞とのビデオ通話の時間も取れなくなっていって。
寂しい気持ちが止まらなくなって。
こんなに寂しくなるくらいなら、会わなくていいかもって、思っちゃったんです。
『宝月家を麗眞が継いだとき、隣にいる貴方に依存しないで、相応しい振る舞いができるかどうかを、ちゃんと自分で確かめたい。
だから麗眞とは少し距離を置きたい』
そんなもっともらしいことを言って。
本心は、遠距離恋愛に耐えられなくて、高校の時みたいにずっと一緒にいたいって麗眞に言いたかったのに。
高校の頃とは環境も違って、お互いの生活もある。
子供っぽいって思われて愛想尽かされるんじゃないか、って思ってしまって。
どうしても言えなかったんです。
それに、麗眞との子供をお腹に宿して、少しの間母親になって。
だけど流産したことも。
言いづらいことがあったら書くことにした交換日記には書いたけど。
それも結局直接は言えなくて。
……馬鹿ですよね、私。
今でも麗眞のこと、こんなに好きなのに。
私があんなことを言わなかったら、今頃は麗眞の隣で幸せに過ごしていられたのかな」
そうこぼした椎菜ちゃんの顔に先程までの笑顔はなかった。
今にも髪色に似て茶色がかった目からは大粒の涙が零れ落ちそうだった。
私にだからこそ言える、椎菜ちゃんの心からの本音。
他の誰でもない、私に溢してくれたことが、少し嬉しかった。