太陽と雪
「貴方が言うならそうなのかもしれないわね。

さっそく……風当たりの良い場所とやらに案内してちょうだい」


「かしこまりました、彩お嬢様」


そうやって公共の場であるにも関わらず、私に向かって深々とお辞儀した矢吹。

近くの高い建物にあるテラスデッキに到着。


海からの風が当たって、気持ちが落ち着くのが分かった。

私の顔をしばらく眺めていた矢吹は、失礼致します。と言ってから、

私の髪に付いているクリップを外して、三つ編みをほどいた。

しばらくして、髪がさきほどのホテルにいたときより強く引っ張られるのを感じた。


「……!?」


「これで、もう大丈夫でございますよ。

痛かったのでしたら、お詫びをいたします。

失礼いたしました。

予想以上の人の多さに、三つ編みがほどける危険があったもので、先ほどよりかなりキツめに結わせていただきました」


「そうなの?
ありがとう」

「これくらい、お安いご用でございます。

常に、主の魅力を引き出すことを第一に、それぞれの主に仕えているのでございますから」


何よ……カッコイイこと、こんな公共の場所で言わないで。

風は確かに気持ちいいけれど、赤くなっている顔を冷ましてくれるほどでは、ないんだから。


「こんな場所にこんなところ、あったのね。
海風が気持ちいいわ」


「それはようございました」


頭痛が消えるまで休んでいようということになった。

もちろん、矢吹の提案。

しばらくベンチに座っていた。


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