バイバイハニー
「一紗もね、きい君を抱きしめたかったの
ぎゅって、全部!」
大きく、しかし平たくなった一紗の胸に、
俺は飛び込むように顔を押し付けていた。
……いつもとは逆だ。
華奢な、俺の腕にすっぽり収まっていた一紗の体は、今は逆に、俺を包み込む。
背中に回る手も大きくなって、
だけど温かさは変わらない。
「それだけ?」
腕の中から顔を出して、見上げて尋ねる。
「他にもね、いっぱいあるよ。
歩く時に、車側を歩くとか」
……いつも、2人で歩く時
俺は車道側を歩くようにしている。
それは、彼女が少々のんびりやで、
時々ヒヤリとさせられるからだ。
「駄目だよ、男でも。
一紗は一紗なんだから」
いくら外見が変わっても、
言動なんかはそのままだから。
危なっかしい事はさせられないよ。
不満げに頬を膨らます一紗に、
思わず笑みがこぼれてしまう。
その事に、さらに不満そうだ。