バイバイハニー

「一紗だって、好きな人を守りたいよ。
カッコいいきい君のヒーローになりたいよ」

それが男になった理由らしい。


「俺はいっつも、
一紗に守ってもらってるよ?」

確かに車道側を歩くのは俺だ。

だけど、泣きたい時に、
どうにか涙を堪えられるのは、
一紗が傍にいるからだ。
黙って抱きしめてくれるからだ。

俺の頭を抱きしめようとして、
結果的に俺の肩へ体重をかけてくる。
その重みが、いつも温かい。

ホラー映画を見た時に、
俺より怖がる一紗がいるから、
強がっていられる。
度を越した時には、一緒に震えて眠れる。


「俺は可愛い一紗が好きだよ」

それでも納得がいかない一紗の、
唇には届かないから、伸びあがって顎に。
小さくキスをした。

< 4 / 11 >

この作品をシェア

pagetop