バイバイハニー
「一紗だって、好きな人を守りたいよ。
カッコいいきい君のヒーローになりたいよ」
それが男になった理由らしい。
「俺はいっつも、
一紗に守ってもらってるよ?」
確かに車道側を歩くのは俺だ。
だけど、泣きたい時に、
どうにか涙を堪えられるのは、
一紗が傍にいるからだ。
黙って抱きしめてくれるからだ。
俺の頭を抱きしめようとして、
結果的に俺の肩へ体重をかけてくる。
その重みが、いつも温かい。
ホラー映画を見た時に、
俺より怖がる一紗がいるから、
強がっていられる。
度を越した時には、一緒に震えて眠れる。
「俺は可愛い一紗が好きだよ」
それでも納得がいかない一紗の、
唇には届かないから、伸びあがって顎に。
小さくキスをした。