恋人という名のゲーム
久我さんに巻き込まれるようにたわいもない会話をして、食事は終わった。
「美咲、家どっち? 送ってく」
「いえ、大丈夫です。歩いて帰れる距離なんで」
「だったらなおさら。夜一人で歩かせるわけに行かないよ」
久我さんの言葉はあくまで紳士的なのだけど、どうにも警戒心が消えない。
「送り狼なんてしないよ、今日はね。どうしても嫌だって言うなら、タクシー使いな」
久我さんがお財布を出そうとした。まったくふざけたかんじのない穏やかな口調は、かえって有無を言わさぬ力があった。
「…ごめんなさい。送ってください」
私が頭を下げると、久我さんは穏やかに笑って、帰ろうか、と言っただけだった。冗談のような口説き文句が飛んでくるのを覚悟していただけに、少し意外だった。